2016年9月23日金曜日

「もんじゅ」は廃炉を含め見直し 核燃料サイクルは推進

 政府は21日、高速増殖原型炉「もんじゅ」については、「廃炉を含め見直しを行う」とする一方で、「核燃料サイクルを推進するとともに、高速炉の研究開発に取り組む」との方針を確認しました。
 これは、これまで1兆2000億円を投じたものの全くモノにならず、これから再稼働させるにはさらに6000億円を要するとされる「もんじゅ」の継続は、到底国民の理解が得られないとしてこの際廃炉にするものの、核燃料サイクルは推進するとともに高速炉の研究開発自体は継続するというものです。
 
 「もんじゅは実験炉から原型炉、実証炉、実用炉へと進むうちの、まだ第2段階のものに過ぎずに1970年代の計画当初は総費用350億円の見積もりでしたそれが、40年間のうちに貨幣価値が変わったとはいえ1兆円をはるかに超える出費にまで膨らんだ挙句、何の成果も得られなかったわけです。
 朝日新聞は22日付で、「もんじゅ廃炉へ 無責任体制と決別を」の社説を掲げ、「もんじゅ廃炉へ 1兆円投入・20年間停止 責任総括を」との記事を出しましたが、無責任を旨とする官僚たちから納得のいく報告が出る可能性は皆無です。
 
 「もんじゅ」の廃炉もまだ決定したわけではありません。問題は更に莫大な出費を要する「核燃料サイクル」を今後も推進するという点です。
 「サイクル」というと聞こえはいいのですがその実態は一体何なのでしょうか。「もんじゅ」がその核などでないことはようやく明らかになりました。そのサイクルに経済的な採算性は全くないということも既に明らかにされています。それでは核燃料サイクルの趣旨は一体何なのでしょうか。そこをあいまいにしたまま巨費を要する「核燃料サイクル」を推進させるというのは筋が通りません。高速炉の研究開発に取り組むという点も同様です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新たな高速炉推進 「もんじゅ」は廃炉含め見直し 閣僚会議
しんぶん赤旗 2016年9月22日
 政府は21日、「核燃料サイクルを推進するとともに、高速炉の研究開発に取り組む」との方針を確認しました。日本原子力研究開発機構が運営する高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)については、「廃炉を含め抜本的な見直しを行う」としました。同日開かれた原子力関係閣僚会議で決定。会議を踏まえ、年内に結論を出すといいます。
 
 高速炉は、普通の原発(軽水炉)よりエネルギーの高い高速中性子を利用する原発。政府は、高速炉の一種であるもんじゅを、原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し再利用する「核燃料サイクル」政策の柱として位置付けてきましたが、すでに破たんは明白です。
 それにもかかわらず今回の決定では、高速炉開発の司令塔を担う「高速炉開発会議(仮称)」を新たに設置。会議には経済産業相を中心に、文部科学相、原子力機構、電力会社や原発メーカーが参加し、開発方針案の検討・策定作業を進めるとしています。
 もんじゅを含め世界でも高速炉実用化のメドはたたず、核燃料サイクル政策・原発推進に固執することで、利用見通しのない大量のプルトニウム(現在約48トン)を保有する日本に対する核兵器開発の疑惑の目が強まることになります。
 
 一方、政府と電力会社は破たんをごまかすため、普通の原発でウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を使うプルサーマル発電の推進を標ぼうしています。国民はただでさえ危険な原発でプルトニウムを燃やすことに不安を持っており、反対の世論がいっそう強まることは必至です。
 
 
(社説)もんじゅ、廃炉へ 大転換の時代に移る 
東京新聞 2016年9月22日
 「もんじゅ」がようやく廃炉に向かう。高速増殖原型炉。使用済み燃料を再利用する核燃料サイクルの要の石だ。日本の原子力政策は転換すべきである。
 原発停止、火力による代替が長引くと、石油や天然ガスの輸入がかさんで「国富」が消えていくという。
 だとすれば、展望なき核燃料サイクル計画による長年の国費の乱用を、どのように説明すればいいのだろうか。
 原発で使用済みの燃料からウランとプルトニウムを取り出す再処理を施して、新たな核燃料(MOX燃料)にリサイクルして、もんじゅでまた燃やす-。それが核燃料サイクル計画だった。
 
◆色あせた原子力の夢
 もんじゅは、計画の要とされた新型の原子炉で、理論上、燃やせば燃やすほどリサイクル燃料が増えていく “夢の原子炉” というふれ込みだった。
 現在の運営主体は、文部科学省が所管する独立行政法人の日本原子力研究開発機構、正真正銘の国策である。
 一九七〇年代の計画当初、もんじゅにかかる費用は、三百五十億円という見積もりだった
 ところが、ふたを開けると、深刻なトラブルが相次ぎ、費用もかさむ。本格稼働から二十二年、原子炉を動かせたのは延べわずか、二百数十日だけだった。
 そんな“夢”というより“幻”の原子炉に、政府は一兆円以上の国富を注ぎ込んできた。止まったままでも、もんじゅの維持には年間二百億円という費用がかかる。
 冷却材として、水ではなくナトリウムを使うのが、高速炉の特徴だ。ナトリウムは固まりやすく、停止中でもヒーターで温めて絶えず循環させておくことが必要だ。月々の電気代だけで、一億円以上になることも。
 
◆飛べない鳥のように
 発電できない原発が、日々大量に電気を消費する。むだづかいを通り越し、皮肉と言うしかないではないか。
 米国や英国、ドイツは九〇年代に、高速増殖炉の実験から手を引いた。もんじゅでナトリウム漏れ事故が発生し、当時の運営主体による隠蔽(いんぺい)が指弾を浴びた九五年、日本も夢からさめるべきだった。
 青森県六ケ所村の再処理工場も九三年の着工以来二十三回、完成延期を繰り返し、建設費用は当初の三倍、二兆円以上に膨らんだ。核燃料サイクルという国策も、ほとんど破綻状態なのである。
 二〇一〇年策定の国のエネルギー基本計画は、高速増殖炉を「五〇年より前に実用化する」とうたっていた。ところが一四年の計画からは目標年が消えていた
 政府の中でも、もんじゅは終わっていたのだろうか。
 それなのに、廃炉の決断は先延ばし。科学の夢を塩漬けにする愚を犯しただけでなく、金食い虫の汚名を着せて放置した。その責任は軽くない。
 
 プルトニウムは核兵器に転用できる。日本は日米原子力協定で、非核保有国では例外的に、プルトニウムを取り出す再処理を認められてきた。政界の一部には「特権を手放すべきではない」との声も根強くある。
 日本は現在、四十八トン、長崎型原爆六千発分とも言われるプルトニウムを国内外に保有する。
 核不拡散を主導する米国も、再来年に迫った協定の期限を前に、日本の「核の潜在力」に対する警戒感を強めている。
 
 プルトニウムは増殖どころか、そもそも減らすべきものなのだ。
 日本はおととし、フランスが、核廃棄物の減量や無害化をめざして開発を進める高速炉「ASTRID(アストリッド)」への技術協力に合意した。核燃料サイクルのシステム自体、減量に軸足を移すべきである。
 3・11を経験した日本で、もはや原発の新増設などあり得まい。これ以上ごみを増やさないように脱原発依存を進めるべきである。しかし、最終処分場の選定が容易ではない以上、保有するプルトニウムや、一時保管されている、すでに出た使用済み核燃料を減らす技術は必要だ。
 先月に再稼働した四国電力伊方原発3号機のような、MOX燃料を通常の軽水炉で燃やすプルサーマル発電だけでは、とても追いつかない。
 
◆雇用や経済は維持を
 廃炉にしたもんじゅの設備を核廃棄物減量の研究拠点に転用できれば、地元の雇用や経済は維持できる。もんじゅと共生してきた自治体も納得できるに違いない。
 いずれにしても、もんじゅがなければ、核燃料サイクルは根本的に行き詰まり、日本の原発政策の大前提が崩れ去る。
 それは、核のごみを増やせない時代への転換点になる。
 
 
もんじゅ廃炉へ 政府、年内に結論 核燃サイクルは維持
東京新聞 2016年9月22日
    (前 略)
 
◆核燃、既に12兆円 本紙調べ
 高速増殖原型炉「もんじゅ」を中心とした核燃料サイクルには、少なくとも十二兆円以上が費やされてきたことが本紙の調べで判明している。施設の維持・運営費で年間約千六百億円が新たにかかる。
 本紙は一九六六年度から二〇一五年度までのもんじゅや再処理工場、取り出したプルトニウムを再利用する混合酸化物(MOX)燃料工場、高レベル廃棄物の管理施設の建設費や運営費、必要になる廃炉・解体費などを積算した。立地自治体への交付金も足しているが、通常の原発向けと判別が難しい場合は、全額を除外している。
 その結果、判明しただけで総額は計約十二兆二千二百七十七億円。主なものでは、もんじゅは関連施設なども含めると約一兆二千億円。青森県六ケ所村にある再処理工場はトラブル続きで稼働していないが、七兆三千億円かかった。
 核燃サイクルのコストを巡っては、電力会社などでつくる電気事業連合会が〇三年、建設から最終処分までの総額は約十九兆円と試算している。
 
     (後 略)