2016年10月18日火曜日

米山氏の勝利は安倍政権の原発政策と謀略に対する県民の鉄槌

 17日には、新潟県知事選での米山氏の勝利をNHKニュースを中心にお届けしましたが、日刊ゲンダイが17日付の巻頭特集で「新潟県知事選 安倍内閣の原発政策と謀略に有権者が鉄槌」とする記事を載せました。NHKのような平板な報道ではなくて、独特の批判精神から色々と鋭い指摘をしています。
 
 同紙は、泉田知事が不可解な出馬取り止めをした背後に目に見えない圧力の存在を県民んが感じていたため、泉田路線を継承すると宣言した米山氏に支持が集まっていた上に、13日に安倍首相が官邸で泉田知事と面会して「官邸に敵対するな」と恫喝したことが決定打になったとし、また投票率が前回より9ポイント上がったのも、そうした知事選への横暴な干渉に対して無党派層までが立ち上がった結果だと見ています。
 
 そして今回の選挙は、原発再稼働の是非が正面から問われ、争点そらしができないなかで脱原発の民意が勝った画期的な選挙だと位置づけるとともに、安倍政権の強引な進め方や国会論戦での詭弁の数々を見て、こうした一党独裁がいかに危険かということを有権者も理解したはずなので、今後はあまりに強引な進め方はできなくなった筈だとしています。まさに、奢る平家は久しからずです。
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新潟県知事選 安倍内閣の原発政策と謀略に有権者が鉄槌
日刊ゲンダイ 2016年10月17日
 歴史的な快挙だ。原発再稼働が最大の争点になった新潟県知事選が16日投開票され、脱原発派で共産・社民・自由(生活)推薦の米山隆一氏が勝利した。
 自公が推薦した前長岡市長の森民夫氏と、事実上の一騎打ち。民進党の支持基盤である連合新潟も早々に森の支援を決め、当初は森の圧勝とみられていた。
 
「告示の時には遠くに見えた相手候補の背中が、すぐ目の前に迫っている。もしかしたら、追い越せる」
 13日に森のお膝元である長岡市で演説した米山は、こう訴えていたが、その言葉通り、驚異の追い上げで逆転勝利を手にした。これは、脱原発を願う民意の勝利だ。NHKの出口調査によれば、投票所に足を運んだ有権者の73%が原発再稼働に反対の立場だったという。
 
 新潟県にある東京電力・柏崎刈羽原発は、原子炉7基の出力が合計820万キロワットと世界最大規模だ。ひとたび事故が起きれば、とてつもない影響が出る。実際、07年の中越沖地震で放射能漏れなどが起きたこともあり、現職の泉田裕彦知事は再稼働に慎重な姿勢を貫いてきた。その泉田は4選を目指して出馬を表明していたのだが、8月に突然、地元紙との確執を理由に出馬を撤回。その裏には原子力ムラの暗躍もあったとされる。
「県民の安全を最優先し、原発再稼働を進める国に対してモノを申してきた泉田知事の不可解な出馬取りやめに、県民は疑問を感じていたはずです。その結果、泉田路線を継承すると宣言した米山氏に支持が集まった決定打になったのは、13日に安倍首相が官邸で泉田知事と面会したことでしょう。敵対するなというドーカツなのか、何らかの密約で懐柔しようとしたのか、いずれにせよ、自民党と原子力ムラは汚いという印象を県民に与えた。こうした権力をカサにきて新潟県民をバカにするような動きが、寝た子を起こすことになったのではないでしょうか」(政治評論家・野上忠興氏)
 
■無党派層が動けば政治は変わる
 新潟県知事選の投票率は5305%と、前回の4395%から10ポイント近く上昇した。無党派層が選挙に行って怒りの一票を投じれば、巨大権力がどんな汚い手を使っても太刀打ちできないということが証明された。これは大きな希望になる。権力の横暴を有権者の良識が止める。この国の民主主義は首の皮一枚でつながったのだ。
 政府の原発推進政策にとって目の上のタンコブだった泉田を出馬断念に追い込み、余裕をかましていた自民党は、脱原発派の米山が猛烈な追い上げを見せたことに焦り、なりふり構わぬ選挙戦を展開した。
 
 終盤には、「共産党・生活の党・社民党主導の知事では、県政が大混乱し、新潟県は国から見放されてしまいます!!」「赤旗を県庁に立てさせてもいいのですか?」などと書いたビラが全県にまかれた。これが自民党の法定ビラというから驚く。
 念のため言っておくと、新潟県旗はもともと赤い。的外れな中傷は、県民の反感を呼んで、自民が白旗を揚げる要因になるだけだった。
 
 党幹部も大量投入。古屋選対委員長は告示後3回も新潟入りし、「エネルギー政策も原子力政策もただ反対、批判するだけでは何も生まれない」「何よりもこの知事選で絶対に勝たなければならない」と叫んだ。二階幹事長も12日に新潟を訪れ、土地改良関連団体や建設業協会など企業・団体を回って締め付け、支援を要請した。 
 
この国の民主主義を守る戦いが一関門を突破した
 現地で新潟県知事選の取材を続けてきたジャーナリストの横田一氏が言う。
 
「二階幹事長は7日に行われた経団連との懇談会でも、『電力業界などオール日本で勝たせる』と言っていました。それで電力、建設、土地改良など企業・団体をフル稼働させたにもかかわらず、敗北を喫した。原発再稼働の是非が正面から問われ、争点そらしができない選挙で、野党と脱原発の民意が勝った画期的な選挙なのです。米どころの新潟ではTPP反対の声も根強い。自公推薦の森氏がアピールした公共事業バラマキに対する批判もあった。足元が定まらない民進党が自主投票にしたことで、安倍政権との違いを明確に打ち出せたことが勝因です。旧来型の利益誘導政治に鉄槌を下し、横暴政権に対峙するモデルケースになり得ます」
 
 問題は、この選挙結果で今後の政治がどう変わるかだ。安倍独裁政権の暴走が止まるのか。野党共闘は次のステージに進むのか。民意無視で再稼働ありきの悪魔的な原発行政は、本当に見直しを迫られるのか。
 柏崎刈羽原発は現在、6、7号機が原子力規制委員会の安全審査中だ。年内か、遅くとも来年には結論が出る。再稼働には地元知事の同意が必須で、ここで再稼働反対派の新知事が誕生したことは重い意味を持つ。もし自公推薦候補が勝っていたら、全国の原発再稼働がなし崩しで進められただろう。
 
■電力会社最優先の政策に民意は「NO」
 すでに九州電力・川内原発や四国電力・伊方原発などで再稼働が実現しているが、柏崎刈羽を動かすことは、福島で過酷事故を起こした東電にとってのメルクマールになる。3・11後に再稼働できた原発は、今のところ「加圧水型」だけで、事故を起こした福島第1原発と同じ「沸騰水型」の柏崎刈羽を再稼働させることは悲願だ。来年1月に改定する新たな再建計画も、柏崎刈羽の稼働が前提になっていて、再稼働の見通しが立たなければ再建計画も進まない。
「会社の存亡がかかっているから、東電や原子力ムラは、あらゆる手を使って柏崎刈羽を動かそうと画策してくるでしょう。ただ、7月の鹿児島県知事選でも九電・川内原発の一時停止を求める三反園訓氏が当選していて、これだけの民意が示された以上、あまりにも強引な進め方はできなくなったと思います」(横田一氏=前出)
 
 当然、原発推進の安倍官邸にも大打撃だ。ただでさえ、支持率が下落傾向にある中で、安倍自身がわざわざ泉田と会うなどシャシャリ出てきたのに惨敗。痛恨の新潟ショックだ。
「民主主義を愚弄してきた政権の自業自得ですよ。世論をバカにしてはいけない。傲りには必ず綻びが生じることを示した選挙結果でした」(野上忠興氏=前出)
 
 こうなると、大メディアが煽りまくっている解散どころの話じゃなくなってくるのではないか。
「自民党に真っ向から対抗する勢力があれば、民意の受け皿になる。物事の強引な進め方や国会論戦での詭弁を見て、安倍政権の一党独裁がいかに危険かということを有権者も理解してきたはずです。新潟の選挙結果は、巨大与党の暴走に一石を投じ、今後の政局に少なからぬ影響を与える。田中角栄本がブームになっているタイミングで、新潟から新しい政治がスタートすることには、歴史的な必然性を感じます」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
 
 民主主義を守る戦いは、なんとか第一関門を突破した。こうなったら、支持率を急落させる二の矢、三の矢が必要だ。一強多弱といわれていても、支持率が下がれば、さすがに好き放題はできなくなる。パフォーマンスとイメージ戦略だけの無能政権なんて、有権者の怒りの前にはひとたまりもないのだ。
 
【新潟県知事選開票結果】
  当528,455   米山隆一 無新  共産・自由・社民 推薦
    465,044   森 民夫  無新. 自民・公明  推薦