2016年12月10日土曜日

10- 三反園知事 声なき声が泣いている

 脱原発派の輿望を担って登場した三反園訓鹿児島県知事は、1日の県議会で「私に原発を稼働させるか稼働させないかを決める権限はない」と答弁し、川内原発の8日の再起動を容認しました。
 知事に原発の再稼働を禁止する法的権限がないのは、はじめから分かっていたことです。それを、だから阻止できないと言うのでは、県民の心を踏みにじる変節と言われても仕方がありません。
 再稼働阻止に役立つはずの原子力問題検討委員会の設置も原発の再稼働後になってしまました。一体どうしたのでしょうか。
 
 同じ条件であっても新潟県の泉田前知事は、誰が聞いても納得できる理由を挙げながら、東電の柏崎刈羽原発の再稼働要請を的確に阻止して来ました。改めて泉田氏の有能さが実感されます。
 
 東京新聞が、「声なき声が泣いている」とする社説を掲げました。
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社説三反園知事 声なき声が泣いている 
東京新聞 2016年12月9日
 鹿児島県の三反園訓新知事は、原発に不安を覚える県民の“声なき声”を集めて選挙に勝った。するともう「原発を止める権限はない」とあっさり。再び募る不安と不信。県民はやりきれない。
 「原発に頼らない社会をめざす」  
 この言葉を信じた県民の心を踏みにじる新知事の変節だ。
 
 運転を再開した九州電力川内原発は、火山の群れの中に立つような原発だ。地元薩摩川内市の住民も「原発が近くにあるのは恐ろしい。認めているのではなく、諦めているだけなんだ」と、つぶやいていたのを思い出す。声なき声だ。
 その不安は熊本地震でさらに強まった。
 地震学者は巨大噴火の恐れを指摘する。再稼働を認めた原子力規制委員会に、火山の専門家と呼べる人はいない。
 自治体は、避難計画の不備を自ら訴える。屋内避難先とされる地域に土砂災害の危険があるとの指摘もある。
 熊本地震の余震が続く中、フランスの原発で強度不足の疑いがある鋼材が使われていた問題が浮上した。
 九電は緊急時対応拠点を免震構造にする計画を撤回し、規制委もそれを受け入れた。
 川内1号機の使用済み核燃料プールは満杯に近づいている-。
 
 知事は「県民の不安を解消するのがトップの役割」と語っていた。その通り。県民の命が守られ、安心して暮らせるように全力を尽くすのが、知事たるものの最も大切な仕事であり、使命であるべきだ。
 当選直後の三反園氏は「安全性が確保されていない原発を動かすわけにはいかない」と言い切った。熊本地震を受けて、二度、九電に一時停止と再点検を要請してはいる。だが、それだけだ。原子力問題検討委員会の設置も再稼働後になってしまった。
 何より「私に稼働させるか、させないかの権限はない」という三反園氏の発言に落胆し、あきれた人は多いに違いない。
 知事が不信を募らせている。
 法的権限がないのは、はじめから分かっていたはずだ。しかし、県民の代表である知事の同意は事実上、原発再稼働の最終要件になっているはずなのに。
 県民の不信をぬぐい去り、「トップの役割」を果たすため、これから何をなすべきか、三反園知事にはよくよく考えてもらいたい。