2016年12月23日金曜日

23- 避難者いじめ 被害者連絡会が声明 「深刻な被害理解を」

 福島原発事故で福島県から避難している子どもに対するいじめ問題について、原発被害者訴訟原告団全国連絡会は22日、「原発被害者の子どもに対するいじめについての声明を発表しました。 
 
 「日々被ばくを恐れながら、やむを得ず故郷を去って困難な避難生活を送っている深刻な被害実態を理解してもらえれば、少しはいじめがなくなるのではないか」、考えのもと、声明では、
 「被害区域の線引きによる分断、被害補償の打ち切りによって不本意な帰還を強制する『帰還政策』『帰還強制』、復興支援住宅などへの定住を求める政策などの、『避難者をいなくする=抹消する』政策を国と東電が行っており、それらは『20ミリシーベルト以下の放射線被ばくには健康への影響はない、がんの発症率は、喫煙、肥満、野菜不足のほうが高いなどという、20ミリシーベルト安全論』に基づいている」、と訴えています
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原発避難者の子いじめ 連絡会が声明「深刻な被害理解を」
毎日新聞 2016年12月22日 
 東京電力福島第1原発事故で福島県から避難している子どもに対するいじめ問題について、原発被害者訴訟原告団全国連絡会は22日、「報道されたいじめは氷山の一角。被ばくを恐れ、やむを得ず故郷を失って困難な避難生活を送る深刻な被害を理解してほしい」とする声明を発表した。 
 
 連絡会は、全国で国や東電に損害賠償を求めている集団訴訟の原告ら約1万人が参加している。声明は、帰還を勧める国の政策によって自主避難者が「なぜ帰らないのか。わがままだ」との誤った見方がされていると指摘。「子どものみならず、大人の世界でも避難者への心ない仕打ちや嫌がらせがある。避難者に対する理解が不足している」としている。 
 
 東京都内で記者会見した5人は「取り返しのつかない被害への償いである賠償金が、宝くじでも当たったような見方をされている」「子どもの中には、避難生活に苦しむ親を気遣い、なかなかいじめを口にしない子もいた」などと実態を語った。連絡会事務局長の佐藤三男さん(72)は今回、声明を出した理由を「問題は深刻化しており、実態を理解してもらえれば少しはいじめがなくなるのではないかと考えた」と説明した。【伊藤直孝】
 
 
原発被害者の子どもに対するいじめについての声明【要旨】
(毎日新聞 2016年12月22日より)
2016年12月22日
原発被害者訴訟原告団全国連絡会
■胸が痛むいじめ事件
 横浜市の事例をはじめとして、各地に避難している原発避難者の子どもに対するいじめ事件が報道されています。
 私たちは、「いじめ」の連鎖に深い悲しみと怒りに打ちひしがれています。どのような理由であれ、いじめは絶対に許されるものではないことを訴えます。
 残念なことに、報道された原発避難者の子どもに対するいじめは氷山の一角です。子どものみならず、大人の世界でも、心ない仕打ちや嫌がらせが続いているのが実情です。全国21か所で提訴している私たちの裁判の中でも、多くの法廷で、子どもや大人に対するいじめや嫌がらせがあることが明らかにされています。
・避難地から福島に戻り、新しい学校に転校、少し新学期から遅れたために、いじめにあった。不登校になり、転校した。
福島県民と分かると差別されるので、出身地を言えない。隠れるように生活している。
福島から来ましたとあいさつしたら、あなたとはおつきあいできませんと言われた
 
■原発事故による避難者が置かれた現状
 原発避難者は、原発事故そのものによる被害を受けたばかりか、被害区域の線引きによる「分断」、不当な「帰還政策」による被害者の切り捨てによって、さらに苦しめられています。
 被害補償の打ち切りによって不本意な帰還を余儀なくされ、他方では避難区域外からの避難者は、現に避難生活が続いているのに、何の保障も得られず、困窮に陥るという事態が生じたのです。
 さらに昨年から、国と東京電力は「帰還強要」政策を強めました。来年3月には帰還困難区域を除いた避難区域を解除し、併せて賠償と住宅支援打ち切りという被害者の切り捨てを強行しようとしており、福島県もそれを容認しています。
 他方で、帰還困難区域についても、復興支援住宅などへの「定住」を求める政策が始まっています。これらは、「もう安全だから避難など認めない」か、「もう戻れないのだから移住しろ」という両面によって、「避難者をいなくする=抹消する」ことを目論む政策と言わざるを得ません。
 
 その「論拠」として言われているのが「20ミリシーベルト以下の放射線被ばくには健康への影響はない、がんの発症率は、喫煙、肥満、野菜不足のほうが高い」などという「20ミリシーベルト安全論」です。
 
 国と東京電力は、あたかも福島県全土が放射能汚染から解き放たれた安全な地域になった、帰らないほうが悪いと思わせようとする政策をとり続けているのです。
 こうした意図による「復興政策」のために、困難な避難生活をしている被害者が一層困難な状況に追いやられていることを、どうかご理解頂きたいと思います
 
■深刻な被害の継続と、国と東電の明白な加害責任
 各地における被害者を原告にした裁判を通じて、避難区域からの強制避難者も避難区域外からの避難者も同様に、避難生活による著しい生活阻害による苦痛が今も続いていること、そして、「故郷(ふるさと)の喪失」という深刻な被害が生じていることが明らかになっています。
 
 多くの被害者は皆、故郷を深く愛しているけれども、避難をする必要があるので避難を続けているのです。誰が、深く愛している故郷を、理由もなく離れることができるでしょうか。被ばくを避けるためにやむを得ず行っている避難生活について、心ない批判や理不尽な仕打ちを受けることは、まことに残念な事態です。
 
■私たちは訴えます
 子どもの社会で起きていることは、大人の社会を映し出している鏡のようなものです。子ども達に対するいじめがあってはならないことはもちろんですが、これを子どもだけの問題として捉えるのでは不十分です。私たちは、上記のとおり、やむを得ず故郷を失い、困難な避難生活を送っている深刻な被害、あるいは今も日々被ばくの不安にさらされている被害の実相について、多くの国民のみなさんのご理解を切に願うものです。それが、原発事故を二度と起こさないための、そして被害者への二重の侵害となるいじめを繰り返さないために必要な礎になると信じます。
 みなさまのご理解と温かいご支援をお願いいたします。
以上