2016年2月29日月曜日

南相馬で大型園芸施設が起工 水耕栽培ハウスや出荷所

 南相馬市が福島原発事故で被害を受けた農業の再生を目指して進める大型園芸施設整備事業建設工事の安全祈願祭起工式27行われました。
 同事業は東京ドーム約1個分に当たる約4万5千平方メートルの敷地に水耕栽培のハウスなどを造るもので、小ネギ、レタスの一種「カキチシャ」を作る葉菜類生産施設3棟と、トマトを作る果菜類生産施設2棟、それに育苗施設、集出荷作業所、管理事務所などを設けます
 
 水耕栽培はスポンジ状のウレタン培地に種を植えたものを浅い水槽に設置して、そこに養分を含んだ水を循環させて成長させるもので、土壌を全く用いずに水だけで栽培する方法です。
 ハウスの屋根は日光を透す素材で作るので寒冷期でも収穫ができ、結果的にホコリ等による汚染も防止することができるので、土壌の放射能汚染が懸念される土地で農耕を行おうとする場合に最も適す方法です。
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南相馬で大型園芸施設が起工 水耕栽培ハウスや出荷所
 福島民友 2016年02月28日
 南相馬市が東日本大震災、東京電力福島第1原発事故で被害を受けた農業の再生を目指して進める市大型園芸施設整備事業(同市鹿島区南海老)建設工事の安全祈願祭、起工式は27日、現地で行われた。
 同事業は東京ドーム約1個分に当たる約4万5千平方メートルの敷地に水耕栽培のハウスなどを造る。水耕栽培のハウスとして小ネギ、レタスの一種「カキチシャ」を作る葉菜類生産施設3棟、トマトを作る果菜類生産施設2棟を建設。ほかに育苗施設、集出荷作業所、管理事務所などを設ける。
 工期は11月末までの予定で、工事費は造成を含め約16億円。施設運営は同市の民間会社ひばり菜園が担う。
 
 安全祈願祭では桜井勝延市長ら市、施工、運営業者の関係者らが工事の安全を願った。起工式で桜井市長は「施設の整備は農業復興の出発点。南相馬産の安全な農産物の供給につなげていきたい」とあいさつした。
 
 
野菜栽培の拠点着工 農業再生へ被災者ら運営 南相馬鹿島南海老地区
福島民報 2016年2月28日
 東日本大震災の津波で被害を受けた南相馬市鹿島区南海老地区で27日、地域農業復興を目指した市の大型園芸施設の安全祈願祭と起工式が行われた。11月末ごろ完成する予定で、被災した農業者らが運営する。 
 敷地面積は約2万4616平方メートルで、小ネギ、トマト、カキチシャを温室内で水耕栽培する。国の復興交付金を活用し、約16億円を投じて市が整備する。被災した農業者らでつくる「ひばり菜園」が運営する。完成後は地元を中心に50~60人を雇用する予定だ。栽培した野菜は県内をはじめ、全国に出荷する予定という。施設は夏ごろから順次、稼働する。 
 安全祈願祭では関係者が玉串をささげて工事の安全を願った。起工式で桜井勝延市長は「南相馬から安全な農作物を供給していきたい」とあいさつした。 
 ひばり菜園の鎌田俊勝社長(50)は鹿島区で農業を営んでいたが、津波の被害で休業を余儀なくされた。起工式に臨み、「やっとスタートが切れる。地域農業の復興につなげていきたい」と感慨深げに語った。 
大型園芸施設の完成イメージ
 

29- 原発立地対策費 約1000億円の税収不足

 これまで国民にはほとんど知らされてきませんでしたが、電気料金から毎年およそ3200億円が電力会社を通じて政府に「電源開発促進税」として納められてきました。
 この促進税は全て原発関連に回され、原発立地自治体への交付金高速増殖炉「もんじゅ」の運営主体への交付金、原発事故に備えた安全対策費などに割り当てられました。
 
 促進税は特別会計で扱われ、毎年多額の税金が余る状況が続いたため会計検査院から問題視されるほどだったのですが、福島原発事故以降は、国の「立地対策」費用が膨らんだ結果、交付金に関しては昨年度からの3年間で1000億円近く税収不足になったということです。
 
 このため政府は今後交付金を減額することを検討していますが、交付金にはもともと使途の制約があるために、これまで自治体は交付金の大半を公共施設などのいわゆる「ハコモノ」を回すしかありませんでした。
 その結果莫大なハコモノの維持費の負担が自治体にのしかかったため、次々に原発の増設に応じるしかなかったという経緯もあります。
 長年交付金に依存した結果経済的自立性を喪失した自治体にとって、急激に交付金を減額されるのはとても耐えられません。立地自治体が経済的自立を果たすためには、自立性を喪失した以上の期間が掛かることは明らかです。
 
 原発事故が原因になっているということであれば、今期は空前の利益が予想されるという東電に応分の負担を求めるべきではないでしょうか。
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原発立地対策費 約1000億円の税収不足
NHK NEWS WEB 2016年2月28日
すべての電気利用者が納めている税金で原発などの立地自治体に交付金などを出す国の「立地対策」が原発事故の影響で費用が膨らみ、昨年度からの3年間で1000億円近く税収不足になっていることが関係省庁への取材で分かりました。国は不足分を補うため積立金などを取り崩していますが、その残高も1年分程度しかなく、専門家は立地対策の在り方を見直す時期だと指摘しています。
国は電気を利用するすべての人が納める「電源開発促進税」を財源にして、原発などを受け入れた自治体に交付金などを出す立地対策を行っています。この税金は資源エネルギー庁などの特別会計で管理され、かつては余るほど潤沢でしたが、5年前の原発事故のあと、除染で出た廃棄物の中間貯蔵施設の整備費が必要になるなどした結果、支出の規模が税収よりも多い年間1700億円以上に膨らんでいます。
こうした立地対策の財政状況について、特別会計の分析や関係省庁への取材を基にまとめたところ、昨年度の決算から来年度の予算案までの3年間に各年度433億円から263億円税収が不足し、その総額が992億円に上ることが分かりました。
国は、不足分を財源に余裕があった時代に積み立てるなどした1200億円余りの資金を取り崩すなどして補っていますが、残高は1年分程度の275億円しかないことが明らかになり、立地対策の厳しい財政事情が浮かび上がりました。
これについて、エネルギー政策に詳しい慶応大学経済学部の川本明教授は「原発事故以降、大きな問題があるのに議論が先送りされてきた。国は本当に必要な立地対策は何なのかしっかりと検証し、支出の削減など制度を一から見直す時期にきている」と指摘しています。
また資源エネルギー庁は「立地自治体との調整を行って必要な予算は要求するが、削らなければいけない予算は削り支出を見直していく」と話しています。
 
原発立地対策は税金が財源に
原発がある自治体などに交付金を出す国の立地対策は電気を使うすべての人が納めている税金を財源にしています。「電源開発促進税」というこの税金は、電気料金と一緒に払い電力会社を通じて国に納める仕組みになっていますが、料金の明細書にも内訳が記載されていないことから納税していることを認識していない人も少なくありません。この税金は、電気使用量が標準的な2人以上の世帯では月におよそ160円です。毎年およそ3200億円の税収があり、立地自治体に交付金などを出す「立地対策」のほか、高速増殖炉「もんじゅ」の運営主体への交付金などの「利用対策」、事故に備えた「安全対策」に使われます。この3つの使いみちの配分は来年度の予算案では、立地対策に最も多い1373億円、率にして43%が充てられていますが、立地対策の支出は1741億円を見込んでいて、税収だけでは368億円足りない状態になっています。
 
かつては多額の税金余る状況も
国の立地対策は、電気料金に上乗せされる「電源開発促進税」が昭和49年に導入されたことで始まりました。特別会計で管理されていて、立地対策の中心は、自治体が原発などを受け入れ建設が始まると多額の交付金が出される制度でした。しかし、新しい原発の建設が予定どおり進まなかったため支出は増えず、この特別会計は多額の税金が余る状況が続きました。会計検査院からは「国民が負担をした税金が使われないままたまり、もったいない」などと指摘され、たびたび改善を求められました。平成15年に当時の塩川財務大臣が一般会計の財政事情が厳しいなか、「母屋でおかゆをすすっているときに離れですき焼きを食べている」と特別会計を批判した際にも焦点の1つとなりました。
平成15年度からは余った税金の使いみちをはっきりさせて透明性を確保しようと、資源エネルギー庁が将来、原発が建設されるときに備えた「積立」として管理するようになりました。また、平成19年度からは毎年借金を重ね、やりくりが厳しい国の予算を助けようといつかは資源エネルギー庁に返すという約束のもと、財務省が余った税金の一部を一般会計で使うようになりました。
しかし、原発事故の影響で昨年度からは一転して税収が足りなくなる正反対の状況となり、平成28年度予算案では資源エネルギー庁の積立は1200億円以上あった残高が初めてなくなってゼロになる見通しで、一般会計から返してもらえるとされるお金も275億円まで減少する見通しとなっています。
 
支出減らす取り組み 行われず
国が「電源開発促進税」を財源にして原発などの立地自治体に支払う交付金や補助金は20種類以上あり、発電量や稼働年数が多いほど増えるのが特徴です。5年前に福島第一原発事故が起きてからも新たな交付金の導入や特例の適用が相次ぎ、支出を減らす取り組みはほとんど行われていないのが現状です。
現在、各地の原発は多くが運転を停止していますが、一定の割合で稼働しているとみなす特例によって立地自治体には多額の交付金が出されていて、この特例は当面、継続されます。さらに、来年度の予算案には原発が再稼働すれば地元の県や道に5年間で最大25億円の交付金を出すことが盛り込まれ、再稼働を進めやすい環境作りが行われています。
一方、廃炉が決まった自治体に対しては従来の交付金は打ち切られますが、財政運営への影響を和らげるため別の形での財政支援を新たに決めるなど、配慮されています。
立地対策を巡っては、去年11月に政府の行政改革推進会議が行った「秋のレビュー」でも議題に挙がり、制度が複雑で事後の評価も行われていないとして情報開示の必要性が指摘されました。
 
1基の廃炉が決まった敦賀市 脱交付金依存へ
国の立地対策の財政が厳しくなるなか、40年以上前から原発が立地し多額の交付金を受けてきた福井県敦賀市は本格的な支出の削減に乗り出しています。
敦賀市では昭和45年に敦賀原発1号機の営業運転が始まり、市の財政や地元の経済は40年以上にわたって原発とともに歩んできました。これまでに市が国から受けた交付金は500億円以上に上り、福祉施設や市民ホールなどが整備されたほか病院や保育園の人件費などにも充てられ、市の財政にとっては欠かせないものでした。
しかし、去年、市内にある原発1基の廃炉が決まったことで、来年度から交付金は6億円余り減ります。国はそれに代わる新たな支援策も導入しますが、金額は年々減って一定の期間がすぎれば無くなるため、市は支出の削減に乗り出しています。
市は、他の自治体と同じ水準まで福祉や医療のサービスを引き下げる計画を作るなど、予算の抜本的な見直しを進めています。また40年近く前に建設され、温泉や健康設備を備えた福祉施設についても毎年の赤字が3600万円に上り、改修にも多額の費用がかかるとして、ことしの秋にも廃止する方針です。
今月、開かれた市民説明会では参加者から「お年寄りの憩いの場を奪わないでほしい」といった戸惑いの声や、「簡素な代替施設を作ってほしい」という要望が出されていました。
敦賀市の渕上隆信市長は「今までの敦賀市は何もしなくても国の交付金をもらえる街だった。今はそんな時代ではなくなり、財政のスリム化に取り組んでいる。全国の原発の立地自治体は小さい経済が原子力に頼る歪んだ構造になっている。緩やかに変わっていくことしかできないので、国の支援を期待している」と話しています。

2016年2月28日日曜日

泉田知事が4選出馬の意向を表明

 泉田裕彦新潟県知事(53)は26日の県議会で、3期目の任期満了に伴う今秋の知事選について「いま一度県民の皆さまに信を問いたい」と述べ、4選を目指して出馬する意向を表明しました。
 
 最大の焦点となるのは、東電柏崎刈羽原発の再稼働問題へのスタンスで、知事はこれまで「福島事故の検証と総括がなければ、再稼働の議論はしない」という趣旨の発言を繰り返してきました。
 しかし26日の県議会で自民党の県議の質問に答える形で、柏崎刈羽原発の再稼働問題について、「再稼働の議論ができないとはこれまでも言っていない」「観念的に脱原発と申し上げたことはない」と述べました。
 
 知事は確かにこれまでも明確に脱原発的な発言をしたことは一度もありませんでした。
 知事選の帰趨とその後の対応が注目されます。
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泉田知事、4選出馬の意向表明 県議会定例会本会議
新潟日報 2016年2月27日
 泉田裕彦知事(53)は26日午前の県議会2月定例会本会議で、3期目の任期満了に伴う今秋の知事選について「いま一度県民の皆さまに信を問いたい」と述べ、4選を目指して出馬する意向を表明した。初当選時から知事を推薦する県議会最大会派の自民党は知事選への対応を「白紙」としており、今後は自民党の動向が焦点となる。
 
 自民党の代表質問で小野峯生県議に知事選への対応を問われた泉田氏は、県政運営の成果として魚沼地域の医療再編などを挙げた上で、「政策の方向性について多くの皆さまの声に耳を傾けながら、信頼され、愛される県庁を基本理念として前進したい」と話した。
 また焦点東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題について、「再稼働の議論ができないとはこれまでも言っていない」「観念的に脱原発と申し上げたことはない」と述べた。
 泉田氏はこれまで4期目の対応について明らかにせず、後援会幹部らと話し合ってきた。
 泉田氏は加茂市出身。京大法学部を卒業後、1987年に通商産業省(現経済産業省)に入省。2004年10月の知事選で初当選し、現在3期目。
 秋の知事選への出馬表明は泉田氏が初めて。
 本県の戦後の知事で4選したのは故・君健男氏だけ。君氏は病気のため、4期目の任期途中で辞任している。
 
 
(社説)泉田氏出馬意向 原発へのスタンスが焦点
新潟日報 2016年2月27日
 泉田裕彦知事は、今秋の知事選に4選を目指して出馬する意向を表明した。
 県議会2月定例会本会議で、最大会派である自民党などの代表質問に産業政策や医療、教育といった成果を挙げ「いま一度県民の皆さまに信を問いたい」と答えた。
 
 最大の焦点となるのは、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題へのスタンスだ。
 現在、福島第1原発事故を教訓に定めた新規制基準に適合しているかどうか、原子力規制委員会の審査が続いている。知事選より前に一定の結論が出る見通しだ。
 知事はこれまで「福島事故の検証と総括がなければ、再稼働の議論はしない」という趣旨の発言を繰り返してきた。
 福島事故をめぐっては近く、東電の旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で、強制起訴される見込みだ。東日本大震災に伴って起きた巨大津波を具体的に予測できたかどうかが、これから裁判で争われることになる。
 東電が、事故当時の社内マニュアルに明記してあった「炉心溶融(メルトダウン)」の判断基準を5年間見過ごしていたことも明らかになったばかりだ。
 なぜ、福島事故で活用されない事態に陥ったのか、東電は第三者を交えた調査に乗りだす。
 福島事故をめぐる検証はまだ道半ばといえる。
 
 ところが、同じ代表質問の中で知事は「再稼働の議論ができないとは、これまでも言っていない」「観念的に脱原発と申し上げたことはない」と述べた。
 とりわけ、再稼働の議論についての答弁は、従来の姿勢からの転換と言っていい。過去の発言との整合性が問われることになろう。
 一方で、政府が世界最高水準としている新規制基準について「世界最高水準ではない」と、1月の会見で批判している。
 原発や再稼働への考え方が分かりづらいとの指摘も出てこよう。県民にもっと分かりやすく、丁寧に説明し、政策の選択肢として示す必要があるのではないか。
 
 焦点はまだある。選挙や県政運営で最大の後ろ盾となってきた自民党の動向だ。
 本紙が昨年12月、全県議を対象に実施したアンケートで、自民党議員の半数近くが4選に「不支持」の意思を示した。
 「多選の弊害」とともに不支持の理由とみられるのが、福島事故の検証と総括が先との姿勢を取り続けてきた知事の態度だ。
 自民党側の厳しい受け止め方は、詰問口調だった代表質問にも見て取れる。
 質問では「審査で適合が認められ、安全と安心が確保されたものは再稼働を行うべきだ」などと、党の考えをあらためて強調する場面があった。
 再稼働に関する知事の答弁は、こうした自民党の動きや意向を踏まえて、「軌道修正」を図った可能性もある。
 自民党は知事選への対応を「白紙」としている。原発再稼働を軸にした知事、自民党双方の動きを注視したい。

原発訴訟の希望と絶望(小出裕章ジャーナル)

 今回の小出裕章ジャーナルは、「原発訴訟の希望と絶望」がテーマです。
 
 直近の高浜原発3、4号機の運転差し止め仮処分の異議審(林潤裁判長)では、その決定文が樋口英明裁判長(当時)の仮処分決定文(46ページ)の5倍の分量であったことをもって、より精緻な判断を下したかのように評価する向きがありますが、単に国や原発側の主張を長々と引用して追認するだけであれば価値はなく、樋口決定のように論理的に疑念が生じる余地がないほどに判示が尽くされていることこそが重要でした。
 
 小出氏は前回(2月21日:「原発と司法」)、「司法が行政に従属していると思うようになって以降、原子力に関する限りは裁判に関わらないようにしてきた」と述べましたが、今回も自分が関与した伊方原発の訴訟で、判決は「国の主張を羅列して、最後にこれが相当と認められると裁判官の言葉が書き並べられているというものだった」と述べました。
 司法への絶望のほどが伝わってきます。
 
 しかし今回はもんじゅ訴訟にタッチした海渡雄一弁護士がインタビューに加わるなかで、「絶望したらその時が負けなんで、やっぱりできることを探すことしかない」(小出氏)と前向きの言葉を聞くことができました。
 
追記 文中の太字個所は原文で行われているものです。また原文では小出氏と海渡氏には「さん」がついていましたが、この紹介文では外しました。
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原発訴訟の希望と絶望
〜第164回 小出裕章ジャーナル 2016年02月27日
 
国の主張を羅列して、最後にこれが相当と認められると裁判官の言葉が書き並べられているという、ただそれだけの判決だったのです」
 
景山佳代子: ここからは、実は今回のゲストの海渡雄一弁護士にも参加していただきます。よろしくお願いします。
小 出: はい、ありがとうございます。
海渡雄一: よろしくお願いします。
小 出: はい。海渡さん、こんにちは。よろしくお願いします。
景 山: おふたりはもう長い…ずっと前から?
海 渡: ぼくはもんじゅ訴訟というのを中心にやってたんですよね。小出先生は伊方訴訟をやられていて、熊取なんかにもだから何度も行っておりました。
景 山: はい。このおふたりの因縁と言ってもいいのかどうかわからないですけど、おふたりの長い付き合いから、今の原発の状況についてお話を伺っていこうと思うんですけれど。小出さんはもう現在、裁判には関わりませんと、明言されるぐらい訴訟というか司法の限界を感じていらっしゃるんですが、この辺、海渡さんは逆にずっと司法の場で原発と戦ってこられたという、このおふたりなんですけれども、ちょっと小出さんが感じた司法の限界とか問題点というのをちょっと伺ってもよろしいでしょうか?
小 出: はい。私は、今海渡さんもおっしゃってくださいましたけれども、伊方原子力発電所の設置許可取消処分裁判というのにずっと関わっていました。そして自分で言うのもおかしいのですけれども、国の科学者との間で非常に詳細な論争を繰り広げたのです。
      そして私たち、いわゆる原子力発電所が危ないと言って証言した学者の方が、国から出てきた学者に対して圧勝したと私は思っているのです。判決はとにかく国の主張を羅列して、最後にこれが相当と認められると裁判官の言葉が書き並べられているという、ただそれだけの判決だったのです。
      それを受けて私は、ああやはりこういうことだったんだ。日本の司法は行政から独立していない。三権分立なんて言っているけれども、そんなものはやはりないのだと、原子力というような国の政策の根幹に関わるものに関しては、司法は無力だと私は痛感しまして、それ以降は原子力に関する限りは司法には関わらないという態度を貫いてきてしまいました
景 山: そうですね。逆に海渡さんは、司法の場でずっとこの原発の問題に関わっていらっしゃったので、海渡さんから。
海 渡: ひとつ質問なんですけども、伊方の時期以降にふたつ、3.11の前にもんじゅの控訴審の時と、志賀原発の地裁判決という勝訴判決があったんですが、それも上訴審では取消されてしまったんですけれども、3.11の後に大飯と高浜で、樋口さんの判決と決定という、僕から見ても本当にこういう素晴らしい裁判官がいたのかなと思うような裁判官が現れて判決を変えてくれた。これをこれからどうやって守っていくか、覆されてしまった高浜をどう覆すかというのが僕らの任務なんですけども、その点小出さんどういうふうに思っていらっしゃいますか?
小 出: 大飯原発の判決で、樋口さんが大変素晴らしい文章を書いてくださったんですね。何か関西電力などによると、原子力から抜けたら火力発電をやるために原油を買わなければいけない。国富がそのために流出してしまうというような主張をしていたわけですけれども、それに対して樋口さんがコストの問題なんか大したことではないと、豊かな国土とそこに国民が根を降ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると、当裁判所は考えているという判決文で結んでくれているわけで、本当にこんなまっとうな裁判官がいてくれたのだと私は感激しました。
      なんとか樋口さんのこの判決を持って行かなければいけないと私も思いました。ただ残念ながら高浜3・4号機の仮処分も結局は、新たに最高裁から送られてきた裁判官に取り消されてしまうということになったわけで、私は樋口さんという裁判官がいてくださったことを本当にありがたく思うけれども、でもまだまだ日本の司法というのはだめなんだなぁと。海渡さんには申し訳ないですけど、私は思いました。
 
海 渡: 今、最高裁は確かに裁判所の中でアベレージで取れば保守的な裁判官が多いと思います。原発推進というふうに考えている人もいるんでしょう。だけども、日本国民全体が原発からもうやめた方がいいという人が多くなっているんだとすれば、裁判所の中もそういうふうになってるはずで。そして自由に判決が書ける環境さえできれば、僕は次の樋口判決に匹敵するような判決というのは近い将来出せるんじゃないか。今はいい裁判官がいたら、その裁判官を人事異動させてしまうというほどひどいことは、僕は最高裁はしなくなってるんじゃないかなあと。だからこそ樋口さんが決定かけたんだと思うんですよね。
小 出: ともすれば、私は絶望しそうになってしまうこともよくあるのですけれども、でも絶望したらその時が最後の負けなんだと、やっぱりできることを探すことしかないと、自分に言い聞かせるようにして毎日を生きています。
海 渡: いや、僕も絶望してますよ。一番ひどかったのは、ぼく浜岡原発訴訟の一審の判決をもらった時はしばらくうつ状態みたいになってた時があったんですけどね。でもやっぱりこうやって続けられているのは、もんじゅで川崎さんという裁判長に勝たせてもらったとか、樋口さんのふたつの判決や決定をもらえたとか、日本で原発訴訟で勝った例っていうのはそんなに4つしかないんですけど、そのうち3つはぼくが関わっている事件なんでですね。そういう自負もあるし、やっぱり裁判官の顔を見ながらやっていると、真剣に考えてくれている人もいなくはないんですよね。
      そして今まで負け続けた判決だと言っても、3.11前の負け続けた判決の中にも裁判官の悩んだ形跡というのはいっぱいあるんですよ。それが実を結んで僕は樋口決定になったんじゃないかなあと思っていて。当面はあきらめないで、原発訴訟を一生懸命やってみようと思っています。どうか、よろしくお願い致します。
小 出: こちらこそ、よろしくお願いします。 
景 山: なんか、おふたりのあきらめない感じっていうのがちゃんと次の世代に次の世代につながっていると私も思います。はい、ありがとうございました。 
小 出: ありがとうございました。 

28- 「大津波到来は予見できた」と原発避難者側 群馬訴訟

 福島原発事故で群馬県内避難している137人が国と東電に損害賠償を求めている集団訴訟の口頭弁論が26日、前橋地裁であり、計41人の原告の本人尋問が終了しました。
 また原告側が入手した、2008年に東電が行った津波試算に関する準備書面などが提出され原告側は、東電は原子炉建屋が浸水するほどの津波が到来しうることを予見できたと主張しました。
 今後は、被告側証人佐竹健治東大教授に対する書面尋問などが行われ、来年度中には判決が出るとの見通しだということです。
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「津波到来 予見できた」 本人尋問終わる 原発避難訴訟で原告
東京新聞 2016年2月27日
 東京電力福島第一原発事故による(群馬)県内への避難者ら百三十七人が、国と東電に計約十五億円の損害賠償を求めている集団訴訟の口頭弁論が二十六日、前橋地裁(原道子裁判長)であった。本人尋問を予定していた原告一人が仕事と健康上の理由で出廷できず今後も難しいと判断され、昨年五月から始まった計四十一人の本人尋問が終了した。
 
 この日は原告側が入手した、二〇〇八年に東電が行った津波試算に関する準備書面などが提出された。原告側は、この試算で原子炉建屋が浸水するほどの津波が到来しうることを予見できたと主張した。ほかに、これまでの原告と被告の主張を踏まえ、裁判所から両者に対して詳しい説明を求める「求釈明」があった。
 
 閉廷後、原告弁護団は会見し、「事実関係の立証について、ヤマ場を越えたとは言えないが山頂に着きつつある」と、審理が佳境を迎えていると説明。今後は、被告側が証人申請した、地震や津波に詳しい東大の佐竹健治教授に対する書面尋問などが行われ、来年度中には判決が出るとの見通しを示した。
 また原告の一人で、震災後に福島県いわき市から前橋市へ夫と避難してきた丹治杉江さん(59)は、「国や東電は自主避難者に『地元の自治体が安全だと言っているのに帰らないのは本人の勝手』などと反論し、被災者の苦難をくみ取るどころか否定した。何事もなかったかのように、必要な賠償は済んだのだからという態度は避難者にとってはつらい」と訴えた。
 次回は六月二十四日に開かれる。 (川田篤志)

2016年2月27日土曜日

27- 原発の60年延長は暴挙 高浜原発1、2号

 原子力規制委が、運開40年を超えた関電高浜原発1、2号機について運転延長を事実上認めました。7月7日までに追加の審査に通れば最長20年の延長が可能になります。 
 実に驚くべきことですが、日本のマスメディアは大広告主である電力会社には全く頭が上がらないので何の批判もしません。
 
 原子炉など強烈な中性子照射を受ける鋼製の設備は劣化が激しいので、当初は30年寿命を想定していた筈です。現実にテストピースによって原子炉の劣化が確認された(⇒ 脆性遷移温度が運開34年の平成21年で98℃に上昇)九電の玄海原発1号機は廃炉になりました。
 それがいつの間にか40年耐用となり、今度は60年耐用になろうとしています(40年の次が60年というのも実に非常識な話です)。
 これを決めたのは現在の規制委で、福島事故後に発足した規制委がそうした基準を作りました。
 さすがにその当時は気が引けたらしくて「延長例外」としていましたが、最初の申請を受けた高浜原発の2基がごく当たり前のように合格になる流れです。今後、引き続き申請される運転延長が次から次へと承認される前例となることでしょう。
 
 関電は運転延長のために、電気ケーブルの防火対策などの諸対策に約2千億円の費用をかけたということです。
 規制委の田中委員長はそれを多としたいらしくて会見で、「費用をかければ技術的な点は克服できる」と述べたということですが、それは付帯的な部分での増強であって、原子炉自体は旧態依然の劣化したままのものです。
 要するに最も心配な部分が爆薬を抱えたままで延長運転に入るということなのに、何故誰も反対しないのでしょうか。不思議なことです。
 
 今後 装置の劣化具合をチェックするようですが、一体どんな根拠でどんな基準でやろうというのか、現状と20年後の強度をどのようにしたら確認できるのか、そもそもそれが非破壊検査で可能なものなのか、是非とも詳細を明らかにして欲しいものです。
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原発40年ルール 早くも形骸化 到底容認できない
愛媛新聞 2016年2月26日   
 「原発の運転期間を原則40年に制限する」。東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえて改正されたはずの原子炉等規制法のルールが、事故から5年を前に早くも形骸化しつつある。 
 原子力規制委員会が、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)を事実上「合格」とした。7月7日までに追加の審査に通れば、最長20年の延長が可能になる。 
 高浜原発は、プルサーマル発電の4号機が今日にも再稼働する。加えて老朽化した1、2号機が再稼働すれば危険度が一層高まる。到底容認できない。 
 
 「40年ルール」は、当時の民主党政権が、古い原発を順次廃炉にしていくために導入した。40年の科学的根拠について、国は原発の導入で先行してきた米国の例を参考に「原子炉の圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」と説明。最長20年の運転延長は、あくまで「例外」と位置付けていた。 
 規制委の田中俊一委員長も、2012年の委員会発足当初、「40年くらいが一つの節目だと認識している。20年の延長は相当困難」と話していた。にもかかわらず、最初に出てきた延長申請を早々と認めた。今後、追随する原発が相次ぎ「例外」が例外でなくなる可能性がある。看過できない。 
 何よりもまず、圧力容器本体が持つのかという根本的な疑問が解消されていない。40年以内なら絶対大丈夫という根拠もなかったはずだ。審査が通ればいきなり20年も延長が可能とするのは無謀と言わざるを得ない。 
 
 配管などの劣化もある。中でも古い原発は、電気ケーブルの防火対策が大きな障壁だった。新規制基準は難燃性ケーブルの使用を求めているが、総延長は1基当たり数百キロに及び、費用的に困難とされていた。 
 ところが関電は、ケーブルの6割を難燃性に交換し、残りは防火シートで包む方法で申請、規制委もこれを了承した。十分な耐火性が発揮できるのか疑問が残る。新規制基準自体が有名無実化する恐れもある。 
 規制委は審査の期限切れを避けたかったのだろう。高浜の審査を優先し、11カ月で終えた。「合格ありき」の疑念が拭えない。老朽化対策に特化した追加の審査は、7月の期限にとらわれることなく、厳格に全うするべきだ。 
 四国電力の伊方1号機も今年9月末で39年になる。廃炉か、運転延長かの決断が6~9月に迫っている。原発30キロ圏内の首長らが要望している通り、「原則40年」の厳守を求めたい。 
 
 老朽原発の運転延長は本来、将来的に原発依存度を下げるとする政府方針に反する。ただ、安倍政権は30年度の電源構成で原発の比率を20~22%にする目標を掲げており、明らかに運転延長や新増設を見込んでいる。なし崩し的な「ルール改変」による原発回帰の姿勢が、国民の不信を招いていることを猛省するべきだ。

2016年2月26日金曜日

26- 福島で子どもの甲状腺がんが増加するも政府、県、メディアは黙殺 .

 2月15日、甲状腺がんと診断された福島県の子どもたちは167人に上り、2巡目の検査で「新たに甲状腺がんまたはがんの疑いの子ども51人が発見されたことが福島県民健康調査検討委員会から報告されました。
 極めて大量の発生なので原発事故による被曝との関係が心配されるのですが、検討委の星北斗座長は「これまでの知見で判断すれば、現時点で放射線の影響は考えにくい」という見解でした。
 
 同検討委の説明でいつも気になるのは、常に「放射線の影響は考えにくい」と真っ先に否定するものの、なぜそう考えるのかの説明が常に欠如しているということです。福島県民健康調査検討委では、こういう状況が数年来続いています。しかしこんな中世期のような状況が継続されていていい筈がありません。
 多分政府にとっても県にとっても、その方が好都合なのでしょうから、よほどの外圧が加わらないと是正はされないでしょう。
 リテラはそのためには何よりもメディアが姿勢を正すことが大事だと述べています。
 
   (関係記事)
2月17日 2巡目で発現した甲状腺がん患者(がん疑いを含む)は51人に
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丸川珠代発言こそが日本のホンネか? 
福島で甲状腺がんの子どもがさらに増加するも政府、県、メディアは黙殺
LITERA 2016年2月25日
 2月下旬の再稼働が確定的となっていた福井県高浜原発4号機で、20日午後、放射性物質を含む一次冷却水が漏れ出していたことが発覚した。高浜原発では1月29日に3号機を再稼働させたばかりで、それから1カ月も経たない4号機の重大事故に衝撃が走っている。  
 だが、当事者である関西電力、そして福井県原子力安全対策課は早々に「大きなトラブルではない」「周辺環境への影響はない」と事故を過小評価するのに必死だ。
 そして、なぜかこうした“原子力ムラ”の言い分がまかり通り、原発の危険性に警鐘を鳴らす報道はほとんど見られなくなっている。
 
 最近もある重大なニュースが無視されてしまった。それは、福島原発事故の後の子どもたちの甲状腺がんの増加だ。2月15日、福島の有識者会議「「県民健康調査」検討委員会」が会見で、事故後、甲状腺がんと診断された福島県の子どもたちは167人に上ると公表したのだ。
 福島原発事故後の2011年10月から始まった当時18歳以下だった子どもへの甲状腺がんの検査だが、現在は1巡目が終わり2巡目の検査が行われている。そこで新たに甲状腺がんまたはがんの疑いの子ども51人(男性21人、女性30人)が発見され、最初の検査と合計で167人という膨大な人数に膨れ上がっている。
 
 しかし驚くのはこの数字だけではない。会見で検討委員たちが次々と発した言葉だ。それらは全て、がん増加と事故のその因果関係を否定したものだった。
 例えば星北斗・福島医師会副会長はもってまわったような言い方で、福島県の甲状腺がんと事故の因果関係をこう否定した。
「チェルノブイリとの比較の線量の話、あるいは被爆当時の年齢などから考えまして、これらのがんにつきましては、放射線の影響とは考えにくいとの見解をこのまま維持する形に、今日の議論としては委員会としてはそうなったと理解しています」
 また被爆医療の専門家でもある同委員会の床次真司・広前大学被ばく医療総合研究所教授も「総じて言えば福島の事故における甲状腺被ばく線量はチェルノブイリ事故に比べて小さいことは言えるだろうと考えます」と同様の見解を表明している。
“チェルノブイリより被爆線量が少ない”そんな根拠だけで、専門家たちが福島事故と甲状腺がん増加の関係を否定したのだ。
 
 さらに同委員会は事故から5年に当たる3月に「中間報告」を取りまとめる予定だが、その最終案にも“チェルノブイリとの比較”から甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくいと断定している。
「これまでに発見された甲状腺がんについては、被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べてはるかに少ないこと、被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと、事故当時5歳以下からの発見はないこと、地域別の発見率に大きな差がないことから、放射線の影響とは考えにくいと評価する。但し、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全には否定できず、影響評価のためには長期にわたる情報の集積が不可欠であるため、検査を受けることによる不利益についても丁寧に説明しながら、今後も甲状腺検査を継続していくべきである」
 要するに何もわからないけど、でも事故とがん増加は関係ない。無責任にもそう断定するものなのだ。しかも最終案には「数十倍多い甲状腺がんが発見されている」と明記されているにも関わらず、だ。
 
 いや正確な発生率はそれ以上という指摘もある。昨年8月には岡山大学大学院の環境疫学の専門家である津田敏秀教授を中心とした研究グループが甲状腺がん発生率は国内平均の20~50倍であり、潜伏期間やチェルノブイリでのデータから今後も増加は避けられないと公表している。これに対し、政府や原発ムラ学者たちは、甲状腺がんの増加を「過剰診断」や「スクリーニング効果」などと反論したが、それでも説明はつかないほどの増加だという。
 さらに「検討委員会」に先立つ今年1月22日、国際環境疫学会(ISEE)は日本政府に対して「福島県民における甲状腺がんのリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、リスクの推定をきちんとやるよう警告する書簡を送ったことも明らかになっている。
 福島県の子供たちに甲状腺がんが多発し、国際機関からさえも指摘を受けているにもかかわらず、政府や“お抱え“学者たちは、決してそれを認めない。今後さらに甲状腺がんが激増しようともその姿勢は変わることはないだろう。
 
 もちろん今回の高浜原発4号機事故にしても同様だ。記事直後から「漏洩した放射性物質の量は国の基準の200分の1以下で、作業員も被ばくしていない」などと嘯いているが、高浜4号機では福島原発事故後でも、同様の一次冷却水が漏れる事故が起きていたことも判明している。
 さらに運転期間が40年を過ぎた高浜1号、2号機においても2月16日に新基準適合検査が終了し、事実上「合格」が確定したが、その審査で大きな問題となっていた地震や津波などへの安全対策は「4号機の審査が終わっているから」としてほぼ無視されたままでの「合格」だった。
 
 こうした問題は高浜だけではない。福島原発事故後も福井県美浜原発2号機や北海道泊原発、茨城県東海原発、愛媛県伊方原発など冷却水漏れが続いているが、いずれのケースも今回同様「環境に影響がない」として政府や電力会社は“事故”として認める姿勢が極めて低い。
 
 こうした姿勢、本心が露骨に現れた典型例が環境相の丸川珠代議員の発言だ。
 2月7日、丸川議員は長野県の講演で、東京電力福島第1原発事故後に、国が除染に関する長期努力目標として「年間1ミリシーベルト」と定めていることに関し「何の科学的根拠もない」「反・放射能の人がワーワー騒いだ」と発言して大きな問題となった。さらに衆院予算委員会で発言を追及された丸川議員は一旦はそれを否定したが、後日、一転して謝罪をするドタバタぶりを露呈した。しかしこれは丸川議員個人の問題や見解ではないだろう。原発再稼働や海外輸出をがむしゃらに推し進める安倍政権の“ホンネ”が表れたにすぎない。
 
 そして、この姿勢はマスコミも同様だ。前述した甲状腺がんの問題は新聞でもテレビでも大きく取り上げられることはほとんどなかった。唯一『報道ステーション』(テレビ朝日系)だけが3月11日、大々的に特集を放映予定だというが、その「報ステ」も3月一杯で古舘伊知郎が降板し、体制が大きく変わる。
 
 東日本大震災から5年、原発報道のこれからを考えると、暗澹とするばかりだ。(伊勢崎馨)

2016年2月25日木曜日

福島のメルトダウンは3日後には判断できた

 東電は、福島原発の事故発生から2か月たってから、メルトダウンが起きたことを認め大きな批判を浴びました
 当時東電は「メルトダウンの定義がなかったため」と弁解しましたが、24日、今度は「当時の社内のマニュアルで事故発生から3日後にはメルトダウンと判断できたことを明らかにしました。重ね重ねの失態です。
 泉田新潟県知事は24日、「事故後5年もの間、このような重要な事実を公表しなかったことは極めて遺憾」とするコメントを発表しました。
 NHKのニュースと併せて紹介します
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メルトダウンの公表に関する新たな事実の公表についての知事コメント 
新潟県ホームページ 2016年02月24日
(報道発表資料)         
 本日、東京電力から、福島第一原発事故の炉心溶融(メルトダウン)の公表に関し、新たな事実が判明したとの報道発表がありました。
 これまで東京電力は、県の安全管理に関する技術委員会において、メルトダウンの定義がなかったため、炉心状況の解析結果に基づき、メルトダウンの公表が2か月後となったと説明してきました。
 このたび、社内調査で当時のマニュアルにメルトダウンの定義が記載されていることが判明したとのことです。
 社内で作成したマニュアルであり、事故当時にあっても、この定義は組織的に共有されていたはずです。
 事故後5年もの間、このような重要な事実を公表せず、技術委員会の議論に真摯に対応してこなかったことは、極めて遺憾です。
 ようやくこのような事実が公表されましたが、メルトダウンを隠ぺいした背景や、それが誰の指示であったかなどについて、今後真摯に調査し、真実を明らかにしていただきたいと思います。
 
本件についてのお問い合わせ先
 原子力安全対策課長 須貝
(直通)025-282-1690 (内線) 6450
 
メルトダウン判断 3日後には可能だった
NHK NEWS WEB 2016年2月24日
東京電力は、福島第一原子力発電所の事故発生から2か月たって、核燃料が溶け落ちる、メルトダウンが起きたことをようやく認め大きな批判を浴びましたが、当時の社内のマニュアルでは事故発生から3日後にはメルトダウンと判断できたことを明らかにし、事故時の広報の在り方が改めて問われそうです。
 
福島第一原発の事故では1号機から3号機までの3基で原子炉の核燃料が溶け落ちるメルトダウン=炉心溶融が起きましたが、東京電力はメルトダウンとは明言せず、正式に認めたのは発生から2か月後の5月でした。
これについて東京電力はこれまで、「メルトダウンを判断する根拠がなかった」と説明していましたが、事故を検証している新潟県の技術委員会の申し入れを受けて調査した結果、社内のマニュアルには炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定すると明記されていたことが分かりました。
実際、事故発生から3日後の3月14日の朝にはセンサーが回復した結果、1号機で燃料損傷の割合が55%、3号機では30%にそれぞれ達していたことが分かっていて、この時点でメルトダウンが起きたと判断できたことになります。
東京電力は事故後にマニュアルを見直し、現在は核燃料の損傷が5%に達する前でもメルトダウンが起きたと判断すれば直ちに公表するとしていますが、事故から5年近くたって新たな問題点が明らかになったことで、当時の広報の在り方が改めて問われそうです。 
 
メルトダウン認めるまでの経緯
今回の発表や政府の事故調査・検証委員会の報告書などによりますと、東京電力は福島第一原発の事故発生から3日後の3月14日に核燃料の損傷の割合が1号機で55%、3号機が30%に達していることを把握しました。さらに翌日の15日には損傷の割合について1号機で70%、2号機で30%、3号機で25%と公表しますが、原子炉の核燃料が溶けているのではないかという報道陣の質問に対して「炉心溶融」や「メルトダウン」とは明言せず、「炉心損傷」という表現を使います。
一方、当時の原子力安全・保安院は、事故発生の翌日の12日の午後の記者会見で、「炉心溶融の可能性がある。炉心溶融がほぼ進んでいるのではないだろうか」と発言していました。ところが、その日の夜の会見では担当者が代わり、「炉心が破損しているということはかなり高い確率だと思いますが状況がどういうふうになっているかということは現状では正確にはわからない」と内容が大きく変わります。
さらに翌月の4月には、当時の海江田経済産業大臣の指示でことばの定義付けを行ったうえで、1号機から3号機の原子炉の状態について「燃料ペレットの溶融」とふたたび表現を変えます。
その後、事故から2か月たった5月になって、東京電力は解析の結果として1号機から3号機まででメルトダウンが起きていたことを正式に認めました。
 
社員「炉心溶融 なるべく使わないようにしていた」
メルトダウン=炉心溶融を巡っては、東京電力の社員が、政府の事故調査・検証委員会の聞き取りに対し、「炉心溶融」ということばを使うことに消極的だった当時の状況を証言しています。公開された証言の記録によりますと、事故当時、東京電力の本店で原子炉内の状態の解析を担当していた社員は、事故から1か月近くたった4月上旬の時点の認識として、「1号機については水位は燃料の半分ほどしか無かったため、上半分は完全に溶けているであろうと考えていた」と述べ、核燃料の一部が溶け落ちていたと見ていたことを明らかにしています。そのうえで、「この頃の当社としては、広報などの場面で炉心溶融ということばをなるべく使わないようにしていたと記憶している」「炉心溶融ということばは正確な定義があるわけではないので、誤解を与えるおそれがあるから使わないと言った考えを聞いた覚えがある」と証言しています。
 
福島・楢葉町の住民「憤りを感じる」
原発事故の避難指示が去年9月に解除され、住民の帰還が始まっている福島県楢葉町の住民が暮らすいわき市にある仮設住宅では、東京電力に対する憤りや不安の声が聞かれました。
今も仮設住宅で避難生活を続けている83歳の男性は、「東京電力はきちんと謝罪をしたのか。憤りを感じます」と話していました。また、72歳の女性は「メルトダウンしたと、本当に分からなかったのか、それとも隠していたのか。今ごろ言われても気分がよくない」と話していました。仮設住宅の自治会長を務める箱崎豊さんは、「楢葉町民が、安全だというお墨付きのもとに帰ろうとしているときに今さらという感じで腹立たしく思う。残念極まりない。企業体質が改めて問われる事態だ」と話していました。
 
福島・大熊町長「発表が遅れた真意は」
メルトダウンを巡る東京電力の対応について、福島第一原発が立地し、現在も全町民が避難を続ける大熊町の渡辺利綱町長は、「なぜ発表が遅れたのか、率直に考えて疑問に思う。単純なミスとは考えられないし発表までにだいぶ時間がかかっているので、そのあたりの真意も知りたい。最初からメルトダウンと発表されていれば、町民などの反応も違ったと思う。信頼を築く上でも、正確な情報を迅速に伝えてもらうのが大事なので、引き続き対応を求めていきたい」と話していました。
 
福島県知事「極めて遺憾」
東京電力の、メルトダウンを巡る通報などの対応について、福島県の内堀知事は「3月14日の時点で『炉心溶融』という重要な事象が通報されなかったことは極めて遺憾だ。今後、迅速で正確な通報や連絡が徹底されるよう、改めて強く求めたい」というコメントを出しました。
 
新潟県知事「隠蔽の背景など明らかに」
新潟県の泉田裕彦知事は、「事故後、5年もの間、このような重要な事実を公表せず、原発の安全対策の検証を続けている県の技術委員会に対しても真摯(しんし)に対応して来なかったことは極めて遺憾。メルトダウンを隠蔽した背景などについて今後の調査で、真実を明らかにしてほしい」というコメントを発表しました。