2017年1月12日木曜日

富岡町 4月1日に避難指示解除へ 地元と政府 意見交錯も

 政府は富岡町の帰還困難区域を除いた区域の避難指示を41日に解除する方針です。
 解除対象は居住制限、避難指示解除準備の両区域の計3837世帯9601人で、町人口の約7割を占めます
 政府は今月中に郡山、いわき両市と東京で住民懇談会を計5回程度開いて町民に説明し、意見を聞く予定にしています
 政府は昨年10月に今年1月の解除を提案しましたが、4解除目標にしていた町が難色を示したほか、町民から「時期尚早」などの意見が相次ぎ取り下げた経緯があります。
 問題は帰還区域の放射能レベルがどうであるかですが、この種の報道ではいつもその点が明らかにされません。健康に支障のないレベルなのかどうかこそが帰還の是非を判断する第一の基準です。
 
 それとは別に、政府が5年後をめどに避難指示を解除するとした帰還困難区域の特定復興拠点を巡り、地元自治体や住民と政府の間で意見が交錯している問題を福島民報が取り上げましたので、併せて紹介します。
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避難指示「4月1日解除」評価 政府、富岡町に方針説明
 福島民友 2017年01月11日
 政府は10日、東京電力福島第1原発事故による富岡町の帰還困難区域を除いた区域の避難指示を4月1日に解除する方針を示した。今月中に郡山、いわき両市と東京で住民懇談会を計5回程度開いて町民に説明し、意見を聞く予定。
 
 町が掲げていた解除目標に沿った形で、政府の原子力災害現地対策本部の後藤収副本部長が郡山市で開かれた町議会全員協議会で町と町議会に意向を伝えた。後藤氏は「住民懇談会を開いた上で、町、町議会と相談して最終的に(解除時期を)決定したい」と述べた。
 宮本皓一町長は「国は私どもの思いを受け止めてくれた」と評価した。一方、「(線量低減や生活環境整備など)町議からいろいろな懸案事項が指摘されたので、国がきっちり対応することが条件になる」と政府に注文を付けた。
 
 政府は原発事故からの復興指針で居住制限、避難指示解除準備両区域の避難指示を3月末までに解除するとしており、同町の避難指示について、昨年10月、今年1月中に解除したい意向を示した。しかし、4月の解除目標を掲げる町が難色を示したほか、町民から「時期尚早」などの意見が相次ぎ、政府は意向を取り下げた経緯がある。
 
 
特定復興拠点 地元と政府 意見交錯 整備場所や数、除染範囲
福島民報 2017年1月11日
 政府が5年後をめどに避難指示を解除するとした帰還困難区域の特定復興拠点を巡り、地元自治体や住民と政府の間で意見が交錯している。浪江町は津島、苅野、大堀の3地区での拠点整備を求めているが復興庁の回答はまだない。葛尾、飯舘両村では区域内の全面除染を優先させるべきとの声が上がる。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から5年10カ月を前に、大熊、双葉両町は10日、地元意向の尊重を政府に要望した。
 
■異なる実情
 政府は特定復興拠点について「核となる拠点を定め、除染しながら徐々に(拠点の)範囲を広げるのが基本だ」との認識を示す。
 しかし、浪江町は複数の拠点整備を求めている。町内を通る常磐自動車道の東側に位置する苅野、西側の大堀、北西の山間地に位置する津島の各地区はもともと村で、昭和31年に合併した。各地区に固有の風土と文化がある。このため町は地域再生には各地区に拠点を設ける必要があると主張してきた。政府は福島民報社の取材に対し、「各町村の拠点整備は1カ所だけとは決めていない」としながらも、現段階で町には明確な回答をしていない。
 富岡町はこれまでのところ拠点の整備場所を決めていない。帰還困難区域にはJR夜ノ森駅や夜の森公園などがあり、周辺に住宅地が広がる。町は「拠点の線引きが難しい」としている。
 
■線量低減が先
 葛尾、飯舘両村の住民が求めている帰還困難区域の全面除染は、拠点設置などを盛り込んだ政府の「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」と合致しない。政府関係者は「全ての住民が帰還するかどうか分からず、全域除染は効率的でない」と否定的な見解を示している。
 葛尾村では帰還困難区域の野行(のゆき)地区の全域除染などを国に求めるべきとの陳情があり、村議会が昨年12月の定例会で意見書を採択した。飯舘村は今後、長泥地区の住民と拠点整備の進め方などに意見を交わす。
 
■不透明
 10日、大熊町の渡辺利綱町長、双葉町の伊沢史朗町長は今村雅弘復興相に「町の復興が置き去りにされないよう地元の意向を最大限尊重してほしい」と要望した。今村氏は「地元と相談しながら取り組む」と応じた。
 大熊、双葉両町は帰還困難区域が町の多くを占め、それぞれJR大野駅と双葉駅の周辺を中心に広範囲の拠点整備を求めている。
 
 拠点整備を巡り、政府は平成29年度予算案に除染などの関連事業費として309億円を計上した。予算は必要に応じて積み増すとしている。ただ、国の財政状況は厳しく、政府関係者は「拠点整備は確保した財源の範囲内でしかできない。優先順位を付けて段階的に進めるしかない」と明かす。地元意向がどれだけ反映されるかは不透明だ。