2017年3月6日月曜日

06- 帰還住民の高齢化率5割超 事故前から倍増 4月から広域バス3路線

 避難指示が解除された地域で、帰還者に占める高齢者の割合が、各自治体で5割を超えることが分かりました。この比率は事故前の比率のほぼ倍に達します。また平均の帰還率は約13.3%にとどまりました。
 現在は健康者が多いですが、いずれ介護や医療のニーズが高まるのは確実です。
 
 それとは別に、帰還後住民の交通手段を確保するため、4月1日から市町村をまたぐ3路線で広域バスの運行が始まります。広域バスの運行で通勤や通院、買い物などの利便性まることを目指しています
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<震災6年> 帰還住民の高齢化率5割超
河北新報 2017年03月05日
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の旧避難区域で、帰還者に占める高齢者の割合が各自治体で5割を超えることが、河北新報社のまとめで分かった。健康な帰還者が多いが、高齢化で介護や医療ニーズが高まるのは確実。避難指示が今春解除される自治体を含め、介護人材の確保など体制の再構築が緊急課題となっている。
 
 これまでに帰還困難区域を除き避難指示が解除された5市町村の現状は表の通り。住民の帰還率は全体で13.3%にとどまる。
 帰還者に占める65歳以上の割合は、葛尾村の64.6%が最も高い。南相馬市小高区(54.5%)楢葉町(53.9%)とともに原発事故前の約2倍になった。
 田村市都路地区は人口構成の分類が10歳刻みのため、60歳以上でみると、原発事故前と比べて11.6ポイント増となった。川内村は旧避難区域に限った年齢構成を集計していない。
 高齢者を支える環境は決して十分ではない。葛尾村では診療所や商店が再開していない。住民の訪問活動に当たる村社会福祉協議会は「車の運転ができるなど、比較的元気な高齢者の帰還が多いのが現状」と説明する。
 同社協は昨年8月、介護予防のため、要介護・支援者以外の高齢者も参加できる「生きがいデイサービス」を始めた。ただ介護事業としての採算は取れず、国の交付金を運営費に充てている。
 
 福島県内の被災地では長期避難によって介護や医療体制が崩壊。立て直しが不可欠だが、人手不足が足かせとなっている。福島労働局によると、避難区域を含む相双地区の有効求人倍率(昨年12月)は、介護職が5.02倍、看護職が5.69倍。県平均(介護3.48倍、看護2.99倍)を大きく上回る。
 昨年3月末に再開した楢葉町の特別養護老人ホーム「リリー園」は定員40人に対して入所者は22人にとどまる。16人の入居待機者がいるが、職員不足で受け入れることができない。訪問介護は休止中だ。
 同園は町唯一の特養ホーム。永山初弥施設長は「職員不足が解消しなければ施設の経営も成り立たず、安心して町に戻る環境を整えられない」と話す。
避難指示が解除された自治体、地域の高齢者の割合
地   域
対象者
(人)
帰還者
(人)
高齢者
(人)
帰還率
  
高齢者の割合
(事故前)%
田村市都路地区東部 (14年4月)
316
228
128
72.2
56.1 (44.5)
楢葉町(15年6月)
7363
781
421
10.6
53.9 (25.9)
葛尾村(16年7月)
1450
99
64
6.8
64.6 (31.6)
南相馬市小高区等 (16年7月)
10218
1395
760
13.7
54.5 (27.9)
小    計
 
2503
1373
 
54.9
川内村東部(14年10月・16年6月)
311
64
20.6
合    計
19347
2567
 
13.3
註 地域のカッコ内は指定解除日 高齢者は65歳以上 田村市のみは60歳以上
   川内村は高齢者数不明
 
 
避難解除地域で「広域バス」 市町村またぎ、4月1日から3路線
福島民友  2017年03月04日
 東京電力福島第1原発事故で避難した住民の帰還後の交通手段を確保するため、4月1日から市町村をまたぐ3路線で広域バスの運行が始まる。避難指示が解除された地域は、原発事故の影響でまだ生活環境の整備が十分でないため、広域バスの運行で通勤や通院、買い物などの利便性を高める。
  
 3日に開かれた2月定例県議会で鳥居作弥議員(民進・県民連合、いわき市)の一般質問に尾形淳一生活環境部長が答えた。
 運行が始まるのは、いわき―富岡、船引―葛尾、船引―川内の3路線。福島交通と新常磐交通がバスを運行する。利用者が少ない場合、県が一部経費を補助する。今後、避難指示が解除された他の地域でも、住民や事業者と協議し、広域バスによる交通網を整備する。