2017年7月6日木曜日

06- 大洗被爆事故 放射性物質の回収に着手 1カ月ぶり現場作業

 原子力機構「大洗センター」の作業員被爆事故で汚染された分析室の清掃と復旧作業を4日、ようやく始めました。事故以来、約1カ月ぶりのことです
 この日は飛び散った放射性物質を回収し、原因となった貯蔵容器までの移動経路を確保して機構は「予定通り作業を終えた」としています

 この間、分析室棟のシャワー設備の不良などが伝えられました。その他にも不具合があったのかは不明ですが、清掃・復旧作業着手までに1か月近くも要するのは正常なことではありません。
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放射性物質の回収着手 大洗研被ばく、1カ月ぶり現場作業
茨城新聞 2017年7月5日
日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(大洗町)の作業員被ばく事故で、機構は4日、事故が起きた分析室に入り、現場の復旧作業を始めた。現場作業は事故翌日の6月7日以来、約1カ月ぶり。この日は飛び散った放射性物質を回収し、原因となった貯蔵容器までの移動経路を確保した。機構は「予定通り作業を終えた」としている。
作業は、樹脂製の袋が破裂して放射性物質が飛散した容器が密閉性のない作業台に置かれたままのため、容器のふたをボルトで固定して現場の安全を確保するのが目的。

この日の作業は4日午後2時50分ごろ開始。作業員2人が空気呼吸器などの厳重な装備を身に付け、事故が起きた「燃料研究棟」分析室に入った。
床に付着した放射性物質を拭き取ったり、飛び散った放射性物質の粒子の位置を写真で記録しながら回収したりして、出入り口から容器がある作業台までのルートを確保した。
室内の作業時間は1人20分に限定しており、同日の室内での作業は職員2人で合計27分。時間内に終わらなかった工程は次回に持ち越した。

次回の室内作業は6日に予定し、容器のふたを固定する計画。回収した放射性物質は別の部屋に運び、密閉性のある「グローブボックス」に入れる。全ての作業が完了するまでに5日かかるという。
事故は先月6日に発生した。点検のため貯蔵容器のふたを開けた際、核燃料物質が入るポリ容器を包んでいた樹脂製の袋が破裂し、放射性物質が飛散。作業員5人が内部被ばくした。(戸島大樹)



保安規定違反疑い濃厚 茨城被曝、発生1カ月 規制委判断
産経新聞 2017年7月5日
 日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県大洗町)で作業員5人が被曝した事故は、6日で発生から1カ月。事故後に除染シャワーが故障で使えなかったといった原子力施設の“お寒い事情”が次々と明らかになっている。原子力規制委員会は5日の会合で、立ち入り検査の結果から作業計画書などに不備があったとして、「保安規定違反の可能性が高い」と判断。田中俊一委員長は機構の児玉敏雄理事長に安全についての姿勢をただす考えを示した。

シャワー故障を放置
 「国内最悪の内部被曝事故」。事故翌日の6月7日、50代職員の肺から2万2千ベクレルのプルトニウムが検出されたとする機構の発表は衝撃的なニュースとなった。しかし、搬送先施設での再検査ではゼロで、体表面に放射性物質が残っていたことが判明。その原因として「シャワーの故障」が濃厚になったのは、6月30日の規制委の3回目の立ち入り検査によってだった。
 シャワーは1~2分で流量が細り、別棟から50メートルのホースを引っ張って代用したという。規制委によると、機構は水道の出が悪いことを把握していたが、修理していなかった。事故時に自分自身を除染する訓練も行っていなかった。
 5日の会合で規制委の伴信彦委員は「ホースで水をかぶったのも非常識。体表面の汚染を広めたことはないのか」と指摘した。

作業計画書作らず
 プルトニウムとウランの試料を包んでいた二重のビニールバッグが破裂して起きた今回の事故。機構は原因究明中だが、試料にはエポキシ樹脂が添加されていたことが、封入された平成3年当時の職員への聞き取りで判明。樹脂がアルファ線で分解、ガスが発生した可能性が高いとみている。
 保安規定違反の可能性が高いのは、長期間経過した容器の開封を前に、経験のない作業を対象とした「非定常作業計画書」を作っていなかったことなど(別表参照)。田中委員長は会合で「非定常作業という認識が(現場に)ない。プルトニウムという特殊な物質を扱うに当たっては、慣れとか根拠のない判断はあってはいけない」と述べ、「トップマネジメントは安全文化の基本だ」としてトップの責任に言及した。
 機構は事故原因と対策についての最終報告を8月末に提出する予定で、規制委は保安規定違反などについて最終判断する。


「人も予算も限られ…」 茨城被曝1カ月、関係者に危機感
原子力施設の窮状あらわに
産経新聞 2017年7月5日
 「この事故は、原子力の人材の基盤に関わる危機的状況を強く示しているのではないか」。6日で発生1カ月を迎えた日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県大洗町)の被曝事故をきっかけに、原子力施設の“窮状”を直視すべきだとする声が関係者から出始めている。冒頭発言は原子力規制委員会の更田豊志委員長代理。機構は東海再処理工場など廃止が決まった施設を多く抱え、「ずさん」批判で片付けられない現実がある。

 規制委によると、事故で故障のため使えなかった除染シャワーは、生じる汚染水もポンプの故障でタンクから廃棄できない状態。東日本大震災後は節電のため温水器が取り外され、冷水しか出なかったという。

 事故現場の燃料研究棟は昭和49年竣工。高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の燃料開発などを行ったが、役割を終えたとして平成25年に廃止が決定した。立ち入り検査を行った規制委の担当者は「廃止に向かうため、人も予算も限られていると思う」と指摘した。
 人材育成がテーマになった6月27日の規制委と原子力委員会との意見交換で、田中俊一委員長は「今のままだといずれ枯渇してどうしようもない状況になる」と強い懸念を示した。文部科学省の学校基本統計によると、原子力関連の学科・専攻への入学者は27年度で298人。直近のピークで700人に迫った4年度の半分以下にとどまっている。
 この場で更田氏は「機構にはもんじゅ、東海再処理工場、燃料研究棟など非常に多くの施設がある。現場はいわゆる負の遺産の後始末を任されているが、十分な人的・予算的支援を与えられていないのではないか」とし、「機構の困難に言及せずして人材育成を語れないだろう」と述べた。