2017年7月18日火曜日

太陽光発電関連企業の倒産増加 政府の責任は大きい

 太陽光で発電した電気の買い取り価格の引き下げが進んだことに伴って、太陽光発電の関連企業の倒産が急激に増えています。倒産件数はことし1月からの半年間で合わせて50件と、去年の同じ時期の2・2倍になっているということです。
 日本の太陽光発電の電力買い取り価格は当初極めて高く設定され、利にさといソフトバンク社が大々的な参入を謳って話題になりましたが、非現実的な買い取り価格が長続きするはずはなく現在は当初の半額に下げられました。

 加えて日本では電力会社が送電設備の余裕がないというのを口実に太陽光発電の普及を抑制しているため、かつては太陽光パネル製造の先進国であった日本は今や完全な後進国に落ち込んでいます。中国をはじめとする諸外国太陽光発電を大々的に拡大させ、その結果太陽光発電のコストが世界ベースでは指数関数的に低下しているのに比べて極めて対照的です。
 
 太陽光発電におけるこうした悲劇的な実態に政府が負っている責任は大きいと言えます。
 海外における太陽光発電の趨勢を語る記事「太陽エネルギーが石炭産業を殺す日」を併せて紹介します。
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太陽光発電の関連企業 買い取り価格引き下げで倒産増加
NHK NEWS WEB 2017年7月17日
太陽光で発電した電気の買い取り価格の引き下げが進んだことなどを背景に、先月までの半年間に太陽光発電の関連企業が倒産した件数は、去年の同じ時期の2倍以上に増えています。
民間の信用調査会社「帝国データバンク」によりますと、太陽光パネルの販売や設置などを手がける太陽光発電の関連企業の倒産は、ことし1月から先月までの半年間で合わせて50件と、去年の同じ時期の22倍になっているということです。

太陽光で発電された電気は、国が決めた価格で電力会社が買い取り、利用者の電気料金に上乗せされる仕組みになっています。
しかし、この制度で料金に上乗せされる金額は、今年度の総額で2兆円を超える見通しになっていることなどから、国は利用者の負担を抑えるため、買い取り価格の引き下げを進め、現在は制度が始まった5年前のおよそ半額の水準になっています。
倒産の増加の背景には買い取り価格の低下があると見られ、信用調査会社によりますと、倒産した関連企業の中には太陽光パネルや部品のメーカーも増えているということです。

信用調査会社は「買い取り価格は今後も引き下げられる可能性があり、太陽光の関連企業からは『もはや経営が成り立たない』という声も聞かれる」と話しています。


太陽エネルギーが石炭産業を殺す日
ケビン・メイニー Newsweek 2017年7月15日
<パリ協定を離脱して石炭重視を貫くトランプだが、
技術革新と低価格化でどのみち自然エネルギーが主流になる>
今の時代に石炭産業を保護する――それは、パソコンが急速に普及しだした80年代にタイピスト職を保護するくらい無意味なことだ。
なぜか。ドナルド・トランプ米大統領がどんなにじだんだを踏んでも、太陽光技術の発展によって石炭・石油産業はいずれ破壊されるからだ。

米半導体メーカー・インテルの創業者の1人であるゴードン・ムーアは65年、「半導体の集積度は18カ月ごとに倍増していく」と予測した。半導体の高集積化と低価格化を進めたこの「ムーアの法則」は、太陽光にも当てはまる。
半導体ほど急速ではないものの、太陽光技術もより安く、より高度に、予想を裏切らず持続可能な方法で発展している。2030年頃までに、太陽光は石炭を含むあらゆる炭素資源の半分以下のコストでの発電を可能にするだろう。
その意味では、地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定もほとんど無意味だ。技術が発展し、経済の法則に従えば、おのずと問題は解決されるのだから。

となると、大きな疑問が湧いてくる。世界のどの地域が再生可能エネルギーのシリコンバレーとなり、どの企業がこの業界のインテルやマイクロソフトになるのか? パリ協定を離脱したトランプの決定に何か意味があるとすれば、こうした地域や企業がアメリカではないことを確実にした、ということだ。アメリカは、誰も望まない石炭を掘ることにかけては超一流の国になり果てるだろう。

太陽光パネルの開発過程は、マイクロプロセッサのそれと共通の特徴を持つ。ムーアの法則は本質的に、メーカーが小さな面積により多くの機能を詰め込もうとすることを意味する。おかげで、NASAが月面旅行に結集したコンピューターの力の全てが、今では小さなアップルウオッチに組み込まれている。
同様の力学が太陽光パネルをより高度かつ安価に進化させつつある。技術者は太陽電池の薄型化を追求し、1ワット当たりのシリコンを削減し、効率化を上げて製造コストを押し下げる

専門家は太陽光発電の可能性を80年代から唱えていたし、技術革新の速度も落ちてはいない。米エネルギー省は(少なくとも気候変動を認めない現政権が登場するまでは)、太陽電池モジュールの1ワット当たりの価格が1980年の22ドルから3ドル未満にまで下がったと発表していた。

大容量バッテリーも一役
電力会社が大規模なソーラーパネルを砂漠に設置した場合、コストは1ワット当たり1ドル余りにまで下がる。世界経済フォーラム年次総会での発表によれば、昨年後半の時点で、適切な条件下での太陽光発電のコストが石炭火力発電のコストを初めて下回ったという。
「テクノロジーの低価格化と足並みをそろえ、今や太陽光発電コストも下がり続けている」と、米科学者のラメズ・ナームは言う。「他の電力技術やビジネスにとっては破壊的だ

もちろん、太陽光はクリーンでもある。炭素資源を燃やすことが気候変動につながると分かっている人なら、太陽光を応援したくなるだろう。でもたとえ気候変動を疑う人でも問題なし。彼らも低価格なエネルギーのほうがいいに決まっているからだ。
加えて太陽光は、太陽が死に絶える50億年後まで枯渇する心配がない。太陽光は約5日分で、石油、石炭、天然ガスの総埋蔵量のエネルギーに匹敵する。私たちは膨大なエネルギーのほんの一部を利用するだけでいい。

他方、太陽光発電には信頼性の問題が付きまとう。夜間や悪天のときにはどうなるのか? そこで、バッテリー技術の出番だ。大容量バッテリーもまた、絶えず低価格化を続けている。

結局、政策や条約ではなく技術と経済上の理由から、石炭は遠からず淘汰されるだろう。太陽は輝き続け、太陽光パネルはそれを電力に変換し続け、夜間や曇りの日にも余剰電力はバッテリーに貯蔵され続ける。化石燃料で儲けた大富豪たちが、航空機時代の到来に直面した鉄道王たちのごとき終焉を迎えるのは確実だ。

政府主導で雇用創出を
となると、トランプのパリ協定離脱はどう影響するのか。おそらく自然エネルギー界のシリコンバレーは中国のどこかに誕生するだろう。今年1月、中国国家エネルギー局は20年までに再生可能エネルギーに3600億ドルを投じると発表した。
カネと雇用が自然エネルギー技術に流れていくとするなら、アメリカは既に後れを取っている。なのに米政府は、気にするなと言うばかりだ。
そう、長い間石炭に依存してきた地域や人々は、とてつもなく困難な時を迎えている。北朝鮮の指導者かパプアニューギニアの秘境で伝統文化を守る部族でもない限り、技術革新の波から逃れることはできない。特に、自分を除く世界中が突き進んでいる場合には。

石炭業界にとってベストな選択は、政府が石炭産業の町で自然エネルギー事業に投資し、新たな雇用を創出することだ。かつて米アラバマ州のハンツビルにNASAの施設が新設され、農業地帯の町がロケット産業都市に生まれ変わったように。
トランプがパリ協定離脱を発表した後、ケンタッキー石炭協会のタイラー・ホワイト会長は、「彼の公約達成のための第1ステップだ」と評価した。
恐らくはそうだろう。だが現実には、トランプの公約はサンタクロースがこれからもずっと来てくれると子供に約束するようなものだ。