2017年7月21日金曜日

規制委員長「はらわた煮えくり返る」というものの

 福島原発のトリチウムを含む汚染水の処理を巡り、東電の川村会長が「(海洋放出の)判断はもうしている」と発言し、その根拠として規制委の田中委員長の「国の基準値以下での海洋放出は安全上問題ない」との考えを引き合いに出したことに波紋が広がっています。

 全漁連は19日に川村会長らを呼んで抗議し、「極めて遺憾」とする文書を手渡しました。川村会長は「会社としても個人としても海洋放出を判断した事実はない」が、「結果として漁業関係者に不安と迷惑をおかけした」と陳謝し、汚染水の処理水を安易に放出することはないことを確約しました。

 一方 田中委員長は19日の記者会見で、川村会長が田中氏の考えを引き合いに出して海洋放出に言及したことを、「はらわたが煮えくり返る」と非難し、「私を口実にするのは、事故の当事者として私が求めていた地元と向き合う姿勢とは違う。このままではこの問題は解決しない」と述べました。

 それにしてもトリチウム水の海洋放出に言及すれば全漁連から激しい反発を受けるのは目に見えているのに、東電のトップがそれを平然と口にした無神経さには驚かされます。
 東電が福島事故の処理(廃炉作業)において全く主体性を発揮せずに技術会社らしい対応も見せていないことに、国民は等しく怒りをもっています。そうした国民の感情が理解できないのであればとても会長の任は務まりません。

 とはいえ「はらわたが煮えくり返る」という田中氏の発言もあまりにも感情的で違和感があります。同氏が以前から「トリチウム排水は海洋に放出すればよい」と発言していることは周知の事実なので、それを引き合いに出すなという方に無理があります。
 ことトリチウム汚染水の処理に関しては本格的に処理すれば20兆円かかるとも言われているので、それを「どうすのだ」と責めたてて見てもいまや「東電いじめ」ということにしかなりません(汚染水問題に5年間も漫然と対応した結果、時間の関数で処理対象水が100万トンに近づきつつある現実をもたらした犯人が東電であることは間違いありませんが・・・)。
 国の汚染水対策検討委員会も設置されている(殆ど知られていないのでは?)ということですが、一体何をどう検討しているのでしょうか。

 この件に関しては、規制委こそが原発に関する技術中枢としての責任をもって対策を提案すべき立場にあるのではないでしょうか。
     (関係記事)
7月15日 川村東電会長 「汚染処理水は海に放出するしかない」と
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<東電会長発言>波紋呼ぶ 田中氏「私を口実…はらわたが」
毎日新聞 2017年7月19日
◇処理水の海洋放出関連 全漁連会長「極めて遺憾」
 東京電力福島第1原発の汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出を巡り、川村隆・東電会長の発言が波紋を広げている。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は19日に川村会長らを呼んで抗議。一方、原子力規制委員会の田中俊一委員長は同日の記者会見で、川村会長の言動を「はらわたが煮えくり返る」と非難した。

 きっかけは共同通信の13日の報道。処理水の海洋放出について、川村会長が「判断はもうしている」と発言したと報じた。これを受けて全漁連の岸宏会長は19日、川村会長に「極めて遺憾」とする文書を手渡した。だが、川村会長は「会社としても個人としても海洋放出を判断した事実はない」と否定。「結果として漁業関係者に不安と迷惑をおかけした」と陳謝し、配慮が足りない発言だったことを認めた。処理水の処分については「国や漁業者を含む関係者と慎重に検討を進める」と話した。

 また、報道では、川村会長が規制委の田中委員長の「国の基準値以下での海洋放出は安全上問題ない」との考えを引き合いに海洋放出に言及したと伝えた。田中委員長は同日、「私を口実にするのは、事故の当事者として私が求めていた(地元と)向き合う姿勢とは違う。(このままでは)この問題は解決しない」と述べた。
 福島第1原発の敷地内のタンクに収められている処理水は約78万トンに上る。規制委は海洋放出を求めており、国は有識者による小委員会で処分方法を議論している。【岡田英、柳楽未来】


「はらわた煮えくり返る」東電会長発言に規制委員長
時事通信 2017年7月19日
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は19日の定例記者会見で、東京電力の川村隆会長が福島第1原発の汚染水処理について「田中委員長と同じ考え」という趣旨の発言をしたことを挙げ、「私の名前を使って言うのは、はらわたが煮えくり返る」と怒りをあらわにした。

 川村会長は今月、一部メディアのインタビューで、トリチウムを含む汚染水の海洋放出に言及。東電はその後、「科学的、技術的見地に基づく現行の規制、基準に照らし問題ないという、田中委員長らの見解と同様」との趣旨であり、放出すると決めたわけではないと釈明していた。 


「判断した事実ない」と釈明 東電・川村氏、トリチウム処理水発言
福島民友 2017年07月20日
 東京電力福島第1原発で保管されているトリチウムを含んだ処理水の海洋放出を巡り、東電の川村隆会長が共同通信などのインタビューで「判断はもうしている」と発言したことについて、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は19日、川村会長を東京都の同漁連事務所に呼び、厳重抗議した。

 川村氏は「真意が伝わらなかった。会社としても個人としても判断した事実はない」と釈明した上で、処理水を安易に放出することはないことを確約した。
 全漁連の岸宏会長は「海洋放出に言及したことは漁業者、国民への裏切り行為」と批判。同席した野崎哲県漁連会長は「われわれは(地下水)バイパスやサブドレン(からの排水)など県民として協力してきた。発言は大きな不安感と不信感を持たざるを得ない」と不信感をあらわにした。

 抗議に対し、川村氏は「結果として漁業関係者に大変な不安と迷惑を掛けた」と陳謝したが「(東電が判断したという趣旨で)発言した事実はない」として撤回はしなかった。

 川村氏は、会談後の取材に対し、報道陣から「インタビューで放出の判断について『もうしている』と言った記憶はあるか」と聞かれると「ある」と答えた。
 しかし、その内容は「科学的な安全性に関しては、東電は国の基準通り行えば安全であると判断している」「社会的な問題については風評の問題もあるので東電が主体的に安全性だけで決めることはできない」との二つの側面から発言したと説明した。