2017年8月9日水曜日

訴訟指揮に対し原告が抗議活動 大飯原発差止め控訴審(福井)

 関電大飯原発3、4号機の運転差止め訴訟控訴審に関連し、一審原告住民らが7日、今月から10月にかけて毎月20日に名古屋高裁金沢支部前などで、内藤正之裁判長の訴訟指揮に対する抗議活動をすることを決めました
 原告側が、島崎邦彦東大名誉教授の証言に引き続き、東大地震研の纐纈一起教授らの証人尋問を求めたのを、内藤裁判長7月5日の口頭弁論で却下したため、原告側は内藤裁判長らの忌避を申立てましたが、別の裁判官が713日に却下しました。原告側は不服として最高裁に特別抗告しています。
 
 控訴審では基準地震動の正否が問題となっています。
 政府の地震調査委は、06年に断層の「幅と長さ」から、地震の揺れを計算する方法を公表しましたが、それは地震のマグニチュード(M)を小さめに算定し、揺れを過小評価する場合があるとの指摘が出たため、09年に断層の「長さ」などから揺れを計算する新方式を公表し、以後各地の地震の揺れを計算してきました。
 地震調査委の「強震動評価部会」の纐纈部会長は「活断層が起こす揺れの予測計算に調査委は09年の方式を使っている。それは断層の『幅』は詳細調査でも分からないからで、これはどの学者に聞いても同じ」と、06年方式で算定している規制委の誤りを指摘しています。 

 原告側弁護団長の島田広弁護士は、纐纈氏らの証言申請自体を却下した判事たちは、「真実の解明を拒否し、追い詰められた関電を救済しようとしている」と批判しています。

 裁判官忌避に関する一連の動きについての中日新聞の記事と纐纈氏の見解を取り上げた毎日新聞の記事を紹介します。
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訴訟指揮に対し抗議活動 大飯原発差し止め 福井
中日新聞 2017年8月8日
 関西電力大飯原発3、4号機(おおい町)の運転差し止め訴訟控訴審に関連し、一審原告側の住民らが七日、今月から十月にかけて毎月二十日に名古屋高裁金沢支部前などで、内藤正之裁判長の訴訟指揮に対する抗議活動をすると発表した。

 福井市内で記者会見した原告側弁護団長の島田広弁護士は「真実の解明を拒否し、追い詰められた関電を救済しようとしている」と述べ、内藤裁判長の訴訟指揮をあらためて批判した。
 原告側によると、賛同者とともに同支部の前で訴訟指揮への反対や再考を求める声を上げ、十月には周辺をデモ行進する予定。今月二十日の活動後には近くの金沢弁護士会館で、訴訟の現状を説明する学習会を開く。次回の口頭弁論が十一月二十日に行われる可能性があるため、毎月二十日に行うことにしたという。

 控訴審の審理を巡っては、原告側が東京大地震研究所の纐纈一起(こうけつかずき)教授らの証人尋問を求めたが、内藤裁判長は七月五日の口頭弁論で却下し、近く結審する可能性を示唆。原告側は内藤裁判長ら裁判官三人の交代を求める忌避を申し立てたが、同支部の別の裁判官が同月十三日に却下。原告側は不服として最高裁に特別抗告している。


大飯原発控訴審、住民側が裁判官交代求める 結審方針に不服
福井新聞 2017年7月6日
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止め訴訟控訴審の口頭弁論が5日、名古屋高裁金沢支部であった。内藤正之裁判長は、住民側が行った7人の証人申請を却下、近く結審する方針を示したが、住民側は不服とし、内藤裁判長ら裁判官3人の交代を求める忌避を申し立てた。申し立てに対する決定が確定するまで、控訴審の手続きは停止する。

 住民側の意見陳述で島田広弁護団長(福井弁護士会)は、前原子力規制委員長代理の島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)が4月の証人尋問で基準地震動(耐震設計の目安とする揺れ)が過小評価されていると指摘したことに言及し、「問題点を解明せずに審理を終結するべきではない」と主張。新規制基準に基づく審査が不十分であることを検証するため、東京大地震研究所の纐纈一起(こうけつかずき)教授(地震学)らの証人尋問が不可欠だと強調した。

 一方関電側は、島崎氏の指摘について「詳細な地質調査を実施しており、科学的合理性に欠ける」と反論。今回の弁論までで「主張や立証を尽くした」とした。科学的知見は意見書などで十分主張が可能だとし「住民側の証人尋問は不要」と述べ、裁判所に迅速な訴訟進行を求めた。

 双方の意見に対し、内藤裁判長は「一審は2年近く審理し、控訴審は3年近く審理した」と述べ、判断材料は十分収集できたとし、住民側の証人申請を却下。住民側の河合弘之弁護士(東京)は即座に裁判官の忌避を申し立てた。
 一審の福井地裁は2014年5月、運転差し止めを命じ、関電などが控訴した。

■忌避申し立て
 裁判の公正を妨げる事情があるときに、当事者が裁判官の交代を求める手続き。申し立てから3日以内に理由書を提出する必要がある。審理は別の裁判官が行う。今回の控訴審の場合、申し立てに対する決定に不服があれば、憲法違反などを理由にした「特別抗告」や、重要な判例違反などを理由にした「許可抗告」を最高裁に申し立てることができる。


裁判官忌避申し立てを却下 大飯原発差し止め訴訟控訴審
中日新聞 2017年7月17日
 県内の住民らによる大飯原発3、4号機(おおい町)の運転差し止め訴訟控訴審で、名古屋高裁金沢支部は、内藤正之裁判長ら裁判官三人の交代を求める住民側からの忌避申し立てを却下した。十三日付。住民側はこれを不服とし、最高裁に抗告する。

 住民側は口頭弁論があった五日、東京大地震研究所の纐纈一起(こうけつかずき)教授らの証人尋問申請が却下されたため、その場で裁判官三人の忌避を申し立て、十日に理由書を提出していた。
 金沢支部の石川恭司裁判長は却下理由について「(申し立ての理由が)裁判所の証拠採否に対する不満を述べるものにすぎない」と述べている。

 訴訟では、四月の口頭弁論で、住民側の証人として出廷した前原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦・東大名誉教授が、関電の地震想定について「過小評価の可能性があり(算出方法に)大変な欠陥がある」と証言。住民側は島崎氏の主張を裏付けるためにも、纐纈氏らの証言が不可欠だと訴えていた。


原発・基準地震動 使用回避の計算法、継続の規制委に異議
毎日新聞 2016年8月30日
政府の地震調査委の専門家「規制委の判断は誤りだ」と批判 
 原発の耐震設計の根幹となる基準地震動(想定する最大の揺れ)について、政府の地震調査委員会が「地震の規模や揺れを小さく見積もる恐れがある」として使用を避けた計算方式を、原子力規制委員会や電力会社などが使い続けていることが分かった。調査委は2009年に改良した新方式を採用している。規制委は「(現行の方式を)見直す必要はない」と主張するが、調査委の専門家は「規制委の判断は誤りだ」と批判し、規制委に疑問符を突き付けた格好だ。 
中 略
 調査委は、地震の研究などを担う政府機関。断層の幅と長さから、地震の揺れを計算する方法を06年に公表し、規制委や電力会社が基準地震動の計算に採用している。だが、この方式には、断層の規模や、地震の規模であるマグニチュード(M)を小さめに算定し、揺れを過小評価する場合があるとの指摘が出た。このため、断層の長さなどから揺れを計算する新方式を09年に公表し、各地の地震の揺れを計算してきた。調査委作成の計算マニュアルでは両方式が併記されているが、調査委は現状を踏まえ、マニュアルを改定する検討を始めた。 
 これに対し、規制委事務局の原子力規制庁は「06年方式は断層の詳細な調査を前提に使う方法。電力会社が詳細に調査しており、原発の審査では適切だ」と言う。 

 調査委の「強震動評価部会」の纐纈(こうけつ)一起部会長(東京大地震研究所教授)は「活断層が起こす揺れの予測計算に、地震調査委は09年の方式を使う。規制委が採用する方式の計算に必要な『断層の幅』は詳細調査でも分からないからだ。これはどの学者に聞いても同じで規制委の判断は誤りだ」と指摘する。【高木昭午】 

旧方式の見直しを 
 原子力規制委員会が原発の基準地震動で採用する計算方式に、その「開発元」である政府の地震調査委員会メンバーが疑問符をつけた。基準地震動は、原発が想定し、耐えるべき最大の揺れで耐震設計の根幹だ。規制委は調査委の指摘を機に、その決め方を見直すべきだ。 
 規制委は現行の計算方式を使い続ける方針。だが地震動の専門家がいない規制委が、専門家ぞろいの調査委側の意見を聞かず、改良された方式を却下するのは無理がある。しかも基準地震動には、それ以前の問題もある。原発の建物は「起こり得る最強の揺れ」に備えるのが望ましいが、実際の基準地震動は揺れの「平均」に若干の上乗せをした値に過ぎない。 
 悪条件が重なれば、平均を大きく上回る揺れもあり得る。藤原広行・防災科学技術研究所社会防災システム研究領域長らによると、地震の1〜2割は平均の1・6〜2倍強い揺れを起こし、3〜4倍の揺れもある。だが、どの程度「上乗せ」するかについて、今の新規制基準には規定がない。規制委と電力会社が調整して決めているだけだ。このため、昨春に関西電力高浜原発の運転停止を命じた福井地裁は「基準地震動は理論的にも信頼性を失っている」と断じた。 
 藤原領域長は「上乗せをどれだけ取るか、リスクをどの程度許容するかについての社会的議論が必要だ」と指摘した。【高木昭午】