2017年9月1日金曜日

ミサイルによる原発攻撃にどう対処するのか

 29日早朝 北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、東日本の12道県にJアラートが出され避難が呼びかけられましたが、実際には避難する暇などありませんでした。
 政府はこうした事態に備えて3月以降、地方自治体と共同で住民避難訓練を12回実施してきましたが、肝心の攻撃目標となる基地や原発がある自治体では実施していません。
 政府関係者は「基地や原発を抱える自治体でも実施するのが望ましいが、住民感情を考えると難しい側面もある」と、避難訓練が反基地や反原発感情を刺激することを懸念しているということです要するにパンドラの箱は開けたくないというわけです。

 そもそも原発がミサイル攻撃された場合、具体的にどんなタイムスケジュールでどのような放射能漏れが生じるのか、そうした基本事項についてはまだ何も検討されていないのではないでしょうか。
 仮にそれが出来たとしても安全に避難する計画などはとても立てられません。

 福井新聞によると、原子力規制庁の担当者は会合で「原発がミサイル攻撃に耐えられるかは評価していない。武力攻撃事態対処法や国民保護法で対処する」と述べたということで、一方福井計画には「県地域防災計画(原子力編)の規定を準用する」とあるので、取るべき避難行動は他の原子力災害と同じだということです。
 要するに国も県も、ミサイル攻撃に対しても何の対策もないままで原発の再稼働を進めているということなのですが、原発事故に対して実効性のある避難計画が立てられない日本の立地事情で、ミサイル攻撃対応の避難計画が立てらる筈もありません。
 唯一実効性のある対策は、いま直ちに全ての原発を停止し、全ての核燃料を取り出して安全な場所に保管することです。
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ミサイル住民避難訓練 米軍基地や原発立地は未実施…なぜ
毎日新聞 2017年8月30日
 政府は29日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、東日本の12道県に全国瞬時警報システム(Jアラート)で避難を呼びかけた。こうした事態に備えて3月以降、地方自治体と共同で住民避難訓練を12回実施してきたが、実は攻撃目標となる可能性が指摘される在日米軍基地や原発がある自治体では実施していない。なぜなのだろうか。【岸達也、森田采花】

 「訓練、訓練、ミサイル発射、ミサイル発射」。26日午前、津市西部の榊原町地区。国民保護サイレンに続いて避難を呼びかける声が響いた。付近に飛来する恐れが出たとの想定で、小学校の校庭の子供や保護者は体育館に避難。特別養護老人ホームでは職員が入所者を窓から遠ざけた。
 政府は北朝鮮情勢の悪化を受け、自治体に避難訓練を呼びかけている。津市の訓練は、小学校で除草ボランティアを予定していた地区住民に市や三重県が協力を要請した。県には「こんな訓練に意味があるのか」と苦情も寄せられたが、3日後にはミサイルが北海道上空を通過。県の担当者は「訓練を行う自治体が増えるだろう」と話す。

 今後も北朝鮮のミサイル発射は続くのか。イギリスの軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーの東京特派員、高橋浩祐さんは「4月の軍事パレードでは今回使ったとされる『火星12』など新型ミサイルが複数登場した。未発射のものもあるとみられ、実験が続く可能性が高い」とみる。
 北朝鮮は3月、日本海にミサイルを発射した部隊の任務を「有事に日本駐屯米軍基地を攻撃する」と発表した。専門家も「米軍基地や原発を狙う可能性は否定できない」と語る
 ただ、こうした施設がある自治体で国の訓練は未実施だ。基地が集中する沖縄県では昨年2月、ミサイルが上空を通過したが、県の担当者は「国の要請は市町村に伝えたが、具体的な計画はない」と語る。アジア有数の米空軍基地がある嘉手納町の担当者も「基地があるから危険という説明は政府に聞いていない」。

 廃炉が決まったものも含め原発15基を抱える福井県も実施していない。担当者は「訓練は住民に動いてもらう必要がある」と慎重だ。一方、高橋さんは「着弾する可能性は決して大きくないが、避難訓練を行うならば標的になり得る基地や原発、避難先となる地下街の多い都市部を優先すべきだ」と指摘する。
 各地の米軍基地では万一に備え、迎撃ミサイルの配備や生物化学兵器への対処訓練が行われ、基地の内外で対応は大きく異なる。政府関係者は「基地や原発を抱える自治体でも実施するのが望ましいが、住民感情を考えると難しい側面もある」と説明。反基地や反原発感情を刺激することを懸念しているという。
 基地を抱えるある県の担当者も「目立ち過ぎる訓練は住民を動揺させる。訓練は小さな町に引き受けてもらい、報道を通じて危機感を共有するのが一番いい」と複雑な表情をみせた。


福井県原子力安全専門委で規制庁言及
福井新聞 2017年8月30日
 北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空を通過した29日、福井県庁で開かれた県原子力安全専門委員会では、一部の委員がミサイル対策に言及した。仮に原発が標的となった場合、どう対処すべきなのか。

 原子力規制庁の担当者は会合で「ミサイル攻撃に耐えられるかは評価していない。武力攻撃事態対処法や国民保護法で対処する」と述べた。有事の備えに役立つのが、県や市町の国民保護計画だ。県の計画は危機対策・防災課ホームページにある。
 県計画には「県地域防災計画(原子力編)の規定を準用する」とあり、取るべき避難行動は他の原子力災害と同じと考えるのが基本だ。ただ放射性物質が急激に放出されることも考えられ、放射性物質の拡散前の避難といった規定が役に立たない可能性もある。
 このため弾道ミサイル攻撃への対処として、まずは地下や屋内、頑丈なコンクリート施設に退避する。その後、事態の推移や被害状況に応じて安全な地域への避難指示が出されることから、それに従うことになる。冷静な行動が重要だ。

 一方、発電所自体については規制委の田中俊一委員長が7月、高浜町民との意見交換会で「(新規制基準では)大型航空機落下対策があり、相当の対応はできる」と語っている。航空機の衝突やテロ対策としては、原子炉建屋から離れた場所に「特定重大事故等対処施設」の設置が義務づけられており、事業者はこれらを駆使して可能な限りの対応をする。