2017年9月15日金曜日

安倍政権は原発攻撃対策をしないまま再稼働を推進

 自民党新潟5区支部は13日、泉田元新潟県知事を衆院新潟5区補選の公認候補とすることを決定しました。党中央が泉田氏に出馬を促したものの、同党新潟県議の大半が反対した中でどうなるかが注目されましたが、結局中央の意向が通ったようです。
 このことは「泉田氏が何故自民党から?」と脱原発派を大いに失望させましたが、泉田氏は「柏崎刈羽原発の再稼働の議論は福島原発事故の総括が出来てからである」と筋は通したものの、もともと「脱原発派」ではなかったというのが真相のようです。
 知事を引退した後は国会議員に転身するということを、現役のときから二階幹事長と約束していたとも言われています。

再稼働阻止の泉田前知事はなぜ自民から出馬? 安倍政権は原発攻撃対策もしないまま再稼働を押し進めているのに」という横田一氏の記事がLITERAに掲載されました。
 記事は泉田氏の出馬が県民に与えた失望についても触れていますが、大部分は、泉田氏が「日本の原発はテロやミサイル攻撃への対策が不十分」という思いの中でそのことを警告し、政府に勧告する権限のある「原子力規制委員会」にも申し入れをするなどしてきた人物であるという、“泉田原子力防災論” に紙面を割いています。

「外野からいくら言っても変わらない」原発防災対策について「与党から変える」との思いから、自民党からの出馬要請を受けたというのが泉田氏の理由の説明です。
 それはともかくとして、テロ・ミサイル攻撃に対する防災論自体は死活的に重要と言えます。

 LITERAの記事を紹介します。

 追記 市民連合@新潟 は14日、声明を発表し、衆院新潟5区補選において野党が統一候補を擁立するように求めました。
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再稼働阻止の泉田前知事はなぜ自民から出馬?
安倍政権は原発攻撃対策もしないまま再稼働を押し進めているのに
横田 一 LITERA 2017年9月13日
「北朝鮮の脅威増大でも原発攻撃リスクを軽視、再稼働に邁進する安倍政権は国民の命と安全を脅かす“国賊”に等しい」と実感させてくれたのが、泉田裕彦・前新潟県知事だ。東京電力と対峙して「柏崎刈羽原発」再稼働阻止の“防波堤役”を務めた泉田氏だが、同時に「原発テロやミサイル攻撃への対応が不十分」という警告を発し続け、政府に勧告する権限のある「原子力規制委員会」(田中俊一委員長)の職務怠慢ぶりを厳しく批判、原子力防災(原発事故時の対応)の欠陥を浮き彫りにしてきたことでも知られる。

 しかし原発推進の安倍政権と正反対の立場のような泉田氏が9月8日、新潟五区補選(10月22日投開票)に自民党からの立候補する意向を表明した。すると、「変節だ」「がっかりした」「なぜ野党から出ないのか」といった批判的な声が噴出。翌9日には経産省時代の先輩後輩の古賀茂明氏が千葉市での講演で「ペテン師?」と指摘しながら、県知事選の時からの二階幹事長との密約説を披露した。

 脱原発派の疑問の声が一気に噴出し始めた10日、渦中の泉田氏を囲む会合(講演会と懇談会の二部制)が都内のイタリアンレストランで開かれた。新潟のテレビ局カメラマンが店の入口に張り込み続ける中、予定時間よりも少し遅れて泉田氏が登場。約50名の参加者を前に知事時代(2005年10月〜17年10月)の経験が凝縮された“自論”を訴え始めた。
 それは、自民党からの立候補を了承したとは思えないほど、安倍政権の原発政策とは大きく食い違うものだった。

泉田氏「いま米朝関係が緊迫する中で、「原発にミサイルが当たったらどうするの」とずいぶん前から私個人が言っているだけではなくて、知事会要望としてまとめたのです」(15年8月24日に全国知事会・防災委員長として泉田氏は田中俊一・原子力規制委員長に要望書を手渡した。この頃から「住民の避難対策・テロ対策が不十分なままの再稼働はありえない」と主張している・筆者注)
 さらに泉田氏はこう続けている。
「規制委員会が何と言っているのか、ご存知ですか。「所管でない」と言うのです。ふざけるなということです。「航空機テロも含めてテロとかミサイル着弾は規制の範囲を超える。国民保護法でやってくれ」と規制委員会は言っている。国民保護法で動くのは自衛隊なのですけれども、「(柏崎刈羽原発の周辺住民の)44万人を避難させて下さい」と言ったら、自衛隊は「出来ません」という回答をもらっています。従って誰も(原子力防災に)責任を負っていない状態なのです。外野からいくら言っても変わらない。知事会から(原子力規制委員会の田中俊一委員長に)言っても変わらない。野党で指摘しても変わらない。マスコミで聞いても変わらない。むしろ蓋をされるということになると、どうやってやるのと(略)。何もやらずに「安全だ」「安全だ」というのはおかしいだろうということは強く言いたい」
 つまり、泉田氏は「外野からいくら言っても変わらない」原発防災対策について「与党から変える」との思いから、自民党からの出馬要請を受けたというのだ。しかし、今の安倍自民党に入って変えられるのだろうか。

北朝鮮に原発を攻撃されたら?原子力規制委員会の回答は
 泉田氏は知事時代の13年10月、フリーの記者も参加可能な知事会見「メディア懇談会」をスタートさせたが、この時も泉田氏は原子力防災の第一人者として原発テロ対策の不十分さを詳しく説明していた。
 筆者はこれ以降、日本国民全員が知るべき憂国の訴えである“泉田原子力防災論”をリテラや週刊誌誌などで紹介、原子力規制委員会の田中委員長の会見でも何度もぶつけてきた。
 大飯原発再稼働を認めた今年5月に続き、まさに米朝関係緊迫化で原発攻撃のリスクが高まったとメディアが大騒ぎしていた9月6日、筆者は規制委員会の会見に出席、柏崎刈羽原発再稼働に実質的なゴーサインを出そうとしている田中委員長に再び原発テロの可能性、そしてその対策についての質問をした。しかし、“所管外”として具体的回答をしない姿勢は同じだった。

———北朝鮮の脅威、緊張がますます高まる中で、原発へのテロ、あるいはミサイル攻撃に対するリスクへの対応について、安倍政権と最近、何回ぐらい、どういう話をしているのか、お聞きしたいのです。ちなみに1994年のアメリカと北朝鮮の緊張が極度に高まったときには、羽田政権のときなのですが、警察のトップと自衛隊のトップが話し合って、北陸地方の原発テロに対してどう対応するのか、このままだと自衛隊が十分迅速に対応できないのではないかという話し合いをしているのですが、今回の場合は安倍政権とどういう話し合いをなさっているのでしょうか。
田中委員長 「何かやっていますか」(と職員に声をかけるが、無回答)。やっていないでしょう。やっていませんよ。そっちの問題は規制委員会とか規制庁の問題ではありませんのでね。
——原発の稼働をとめるべきではないかという議論は、規制庁、あるいは政府で、なされていないのか。
田中委員長 そういう主張をされる方もおりますけれども、緊張が高まったら止めめるべきだとか、緊張が高まったら何かすべきだというのは、それはそれぞれのお考えがあるでしょうから、今、私が答えることではありません。
 原発テロのリスクを問題視せずに“所管外”を繰り返す姿勢の田中委員長に再質問をしようとすると、司会者が委員長と一緒になって質問を遮ろうとし始めた。

またしても!筆者の質問を遮りマイクを取り上げた田中委員長

——アメリカでは……
司会  繰り返しになっていますので。
——アメリカでは150人の兵士が……
田中委員長  そういう演説は聞いてもしようがないから。
——アメリカでは150人の兵士が原発を守っているのですが。
司会  質問をお願いいたします。質問ありますか。
——あります、あります。日本の原発テロ対策は不十分だと認識なさっていないのですか。アメリカでは150人の兵士が原発を守っているのですが、今のあまりに貧弱な体制で放置していいと考えてられるのでしょうか。
田中委員長 日本のテロ対策をあなたはどこまでご存知だか知りませんけれども、それはあなたの主張として聞いておきます。

 さらに再質問を続けようとしたが、近づいてきた職員が私の手からマイクと取り上げるとほぼ同時に、司会者が「それでは、本日の会見は以上としたいと思います」と会見を打ち切った。
 これが「原子力規制委 柏崎刈羽、審査合格へ」(毎日新聞)、「東電・柏崎刈羽原発、『合格へ』」(読売新聞)などと報じられた6日の規制委員会後の田中委員長会見の質疑応答だ。
 米朝関係の緊迫化=原発攻撃のリスク増大に目を向けずに、北朝鮮が対岸の北陸地方に位置する「柏崎刈羽原発」の再稼働をしようとしているのだ。
 あまりのノー天気さに唖然とした。会見後に「田中委員長は北朝鮮のことについて何か言っていないのか」と職員に再確認をしたが、「何も言っていません」と回答した。
 田中委員長の態度は、原発テロ対策を含む日本の原子力防災に大きな“穴”が開いていることを浮彫りにするものだ。

 北朝鮮との対決姿勢は繰り返し訴えるが、テロやミサイル攻撃に対して脆弱な日本の原発には無頓着な安倍政権と、規制委員会の無策、無関心。この現実を目の当たりした泉田氏が「自民党国会議員となって原発政策を変える」と意気込むのは分からないではない。
 しかし原発推進の総本山の経産官僚が要職を占める“原子力ムラ内閣”の安倍政権が、一国会議員の主張を受け入れて政策転換をするとはとても思えない。泉田氏は「与党でないと声が届かない」と主張するが、経産省時代の先輩の古賀茂明氏は「寝言を言っているようなもの」と実現可能性は皆無と指摘。「野党系候補として出馬すべき。自民党から出たら落選運動を呼びかける」とも公言もしている。
 泉田氏の去就はもちろん、自民党が“泉田原子力防災論”に基づく原発政策変更をどこまで約束するのか否かが注目される。(横田 一)