2017年12月31日日曜日

原発事故はその後も世界が監視 政府の虚偽は通用しない

 新潟県と東電の合同検証委員会「炉心溶融という言葉を使わないように東電が官邸から言われたというのは虚偽で、使わないよう社内に指示したのは当時の清水正孝社長の判断だった」ことが明らかにされました。
 こんな決定的なところで大嘘を吐く東電の説明を、基本的には鵜のみにしてまとめた「福島原発事故調査委員会報告書」(政府・国会共)においても、東電によって原発を継続するうえで支障となる内容は、極力隠蔽乃至誤魔化されたものになっているであろうことが想像されます。

 福島原発事故で日本が放射能の総排出量を(チェルノブイリの10分の1程度と)発表した時、海外から少なすぎると指摘され、直ちに少し増やしました。それこそ東電が故意に低く抑えて発表した証拠です。
 アーニー・ガンダ―センが指摘しているように、放射能の99%が圧力調整室で除去されたというのはあり得ないことで、特に福島事故の実情に照らせば逆に全量近くが放出されたとみるべきです。この場合、放出量はチェルノブイリの10倍近い値になります。
 現実にアメリカは2014年に、チェルノブイリの1・8倍という試算を公表しています。

 しかし日本はいまだに「放出量はチェルノブイリの10分の1とか7分の1」であると主張していて、福島県で現実に多数の甲状腺がん患者が確認されても、福島県の調査委員会は「被爆量がチェルノブイリより十分に小さいので放射能の影響は考えられない」と一貫して述べています。
 福島原発事故の影響が軽いものであると見せかけようとして、虚偽に虚偽を重ねているのが日本の実態です。

 日刊スポーツに載った「地獄耳」の記事を紹介します。
 文中でのロシア・ザハロワ報道官の発言は、100万トンに達するトリチウム廃水の海洋放流についてのものですが、これも東電と国は、地元福島(の漁業関係者)と話がつきさえすれば、黙って実施する積りなのでしょう。放射能を外界に拡散させてはならないとする国際的原則からの明らかな逸脱です。
 日本は、こと原発事故についても「虚偽の塊」です。
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その後の原発、世界が監視 政府の責任続く/地獄耳
地獄耳 日刊スポーツ 2017年12月30日
 ★東京電力福島第1原発事故の後、炉心溶融(メルトダウン)が2カ月間公表されなかった問題で、当時の官邸から指示、つまり首相・菅直人の指示があったか否かが焦点だった。26日、新潟県と東電の合同検証委員会は「炉心溶融という言葉の使用について官邸からの指示はなく、使わないよう社内に指示したのは当時の社長・清水正孝の判断だった」とする調査結果を公表した。

 ★やっと検証結果が出たわけだが、東電は自分たちの立場を印象付ける第三者委員会で「官邸からの指示」と明記したために起きた混乱だ。この報告をベースに首相・安倍晋三は菅批判をしていたが、ブログを削除した。つまり東電がうそをついていたことを自ら発表し、6年後に東電も入った検証委員会で「事実はなかった」の結果は、あまりに不毛だ。その資料の信頼も揺らぐし、東電の発表をうのみにしていた報道機関や東電自身は、取り消しや謝罪は行わないのだろうか。

 ★日本ではほとんど報道されていないが、20日、ロシア外務省のザハロワ報道官は「福島第1原発の大事故によって発生した液体放射性廃棄物を海に大量に放出するという、東京電力の方針に関する報道は、懸念を呼んでいる」と指摘。「日本政府は放射性汚染水の海への放出を禁止し、福島での大事故によって発生した廃棄物を安全に処理する方法を見つけるべきだ。日本にそのような技術がないのであれば、日本は国際社会に支援を求めることができるはずだ」と会見で発言した。

 ★菅の名誉は回復したが、東電の責任とこの問題を引き継いだ現内閣や政府の責任は続いている。国内では風化が叫ばれるが、世界の政府が監視していることを忘れてはならない。今年1年を振り返ると、政権は内政、外交ともに目先のファクトに飛びつく傾向が強い。事故処理が中途半端では、復興も五輪もない。無視して通用する話でもない。真摯(しんし)な態度とは、避けて通りたいことも丁寧に実現させていくことだ。
(K)※敬称略